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徹底的な低コスト投資家が気にする、投資のコスト kenzさん個人投資家列伝(7)

» 2019年02月27日 16時29分 公開
[斎藤健二ITmedia]

 個人投資家の方々に、投資遍歴から投資に対する考え方まで聞いていくインタビュー企画「個人投資家列伝」。第7回は、徹底的な低コストを意識してインデックスに投資するkenzさんに話を聞いた。

※kenzさんのブログ「インデックス投資@川崎」

アクティブファンドはインデックスファンドにコストで勝てない

 「もともとは定期預金だけだった。ネットバンクだと普通よりも高めの金利だったので預けていて、元本保証しか知らなかった。それ以外は、株といえばチャートを見て売り買いする短期売買だと思っていた」

 大手メーカー勤務のエンジニアのkenzさんは、東京近郊で奥さんと2人で暮らす40代だ。資産といえば、定期預金。それが普通だったkenzさんだが、2007年に勤務先の会社が確定拠出年金(401k)を導入したことで、投資に目覚めた。現在は数千万円の資産を運用している。

 「1カ月で資産配分を決めて入力しろと言われた。土日に検索して調べると、インデックス投資ブロガーの記事がたくさん見つかって、読んだ。これは、やらなきゃダメだと思った。アクティブファンドよりインデックスファンドのほうがコストが安くて分散されているので、長期で利益が出やすい」

 調べた結果、たどり着いたのがインデックス投資。その大きな決め手は低コストだった。kenzさんのブログは「インデックス投資日記@川崎」だが、実はお眼鏡にかなうアクティブファンドがあれば、それを買ってもいいと話す。

 「参考指標ではなく、ベンチマークとなる指標を明示しているアクティブファンドは少ない。そしてコスト。なぜインデックス投資をやっているかというと低コストだから。アクティブファンドがどう頑張ろうが、インデックスにはコストで絶対勝てない」

 インデックスファンドが、TOPIXやS&P500などの指数に連動して受け身で銘柄を選んで買うのに対し、アクティブファンドはファンドマネージャーが企業や市場を分析して、購入する銘柄を選ぶ。腕のいいファンドマネージャーならばインデックスファンドよりも良い成績を上げることも可能だが、どうしてもコストは高くなる。

手数料だけでなく税金もコスト

 kenzさんのコストへのこだわりは徹底的だ。新たに購入するインデックスファンドは、毎年かかるコストである信託報酬を重視する。以前はカブドットコム証券の「フリーETF」という売買手数料無料の仕組みも使っていたが、現在は投資信託に集中している。

 「ETFはまとまった値段で買わないと手数料負けするが、フリーETFを使うと手数料が無料なので、10口ずつ指値をして買えたら買うというのが好きだった。ただ、今はインデックスファンドの信託報酬が安くなって逆転した」

 配当についても、税金というコストに注意すべきだと話す。日本では配当金や分配金には約20%の税金がかかる。ところが投資信託では、配当や分配金を出さずに再投資するので、税金分を複利で運用することができるからだ。

 「日本のファンド(投資信託)の税制は良くて、米国だと税引き後の配当を再投資するが、日本だと配当の税金を払うことなく再投資できている。なるべく分配金をもらわないで再投資するのが重要。信託報酬のコンマ数%の違いよりも、税金のほうが大きい」

 この税払いを極力避けるため、実はkenzさんのポートフォリオは複雑だ。投資を始めてから10年、その時々で最良のファンドを購入してきたが、年を追うごとに優良なファンドが登場してきたためだ。新たに買い増すファンドは変わっていくがが、含み益への課税を嫌い、過去に購入したファンドは、含み益への課税を嫌い、売却せずに保有し続けている。

無リスク資産のうまい活用で信託報酬分を取り返す

 kenzさんは、資産の半分を預金などの無リスク資産にしており、ここでもコスト感覚を遺憾なく発揮している。ブログ上では、インデックス投資に関連した情報以外に、「ネット銀行定期預金金利比較」などの最新情報を頻繁に掲載している。これは無リスク資産を放っておくのではなく、リスクゼロの運用をしっかりやるべきだという考えからだ。

 例えば、ネット銀行の短期定期には金利0.3%のものもあるし、証券口座と連携させることで普通預金でも金利0.1%となる銀行もある。新規口座開設のキャンペーンなどもうまく活用すれば、無リスク資産でもコンマ数パーセントのリターンを生むことができる。これはちょうどインデックスファンドの年間信託報酬に近い。

 「無リスク資産も定期預金などを使って、リスク資産の信託報酬くらいは取り返そうよ」

 リスクを取らずにリターンは上がらない。しかし、投資にまつわるさまざまなコストは、確実にリターンを削っていく。コンマ数パーセントの違いでも、長期に複利運用した場合、大きな違いになる。たとえば1000万円を20年間運用した場合、0.1%の信託報酬の違いで利益が50万円程度変わってくる。コストに徹底的にこだわるkenzさんの姿勢は誰もが参考になる点だろう。

最も低コストな投資先は? kenzさんのポートフォリオ解説

 コスト重視のインデックス投資に向けて、シンプルながら骨太の考えに基づいたkenzさんのポートフォリオを、積み立て中の銘柄を中心に紹介しよう。

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