田中 会社の慣例なんか無視して、チャレンジ精神が旺盛な人をもっと偉い役職に据えた方がいいですね。決定権のある人がピンでわれわれのようなベンチャーに乗り込んでくるとやる気を感じますね。
ベンチャーが提案する金額なんて大企業からすれば大した物ではないですから、小さい金額で試してみたらいいんです。まずはここまで進めて、成功したら次に、ダメだったらやり直しという形で少しずつ進めていけばいい。今はそれができていないです。
マスクド 失敗を恐れ過ぎてますよね。
田中 AI開発における失敗は、失敗じゃないです。1回うまくいかなかったとしても、それは次の成功への布石なんですよ。AI開発で一発OKの会社なんてまずないでしょう。皆さん失敗って言葉におびえ過ぎです。
マスクド 結局ここまで話した内容は、古い体質の会社が引き起こしている問題ですね。でもそういう会社ほどAI、AIって言うんですよね。
―― そうした、昔ながらの企業では何がネックになってるんですかね?
マスクド 大企業では、決裁権を持っている人が本気にならないと何も決まりません。現場レベルで本気になっても、決裁層まで何層もあって次第に熱量が削がれてしまう。
田中 (目の前にあるiPod touchを持ち上げながら)こんな風に日本の企業は目に見える“モノ”があると動くんですよ。でもAIは目に見えないから決裁層に企画を上げられない。上の人たちはモノがないと理解できないし、自分たちの時代とは違うことが理解できていない。日本企業がネットとかデジタルの世界を不得意とする理由の根本原因は、恐らく「目で見て、手で触って確認できないから」なのでしょうね。
―― ここまではAI開発を依頼するユーザー企業の話でしたが、同じ立場にあるAIベンダーについてはどうでしょうか。マスクドさんも連載記事の中で、実体が分からない“自称AIベンチャー”について触れていました。ハッタリをかますベンチャー企業の存在が気になっているようですが。
マスクド ベンチャー企業って、どうしてハッタリをかますんでしょうね。ビジネス戦略なのでしょうか?
田中 それは出資を受けるためです。(ベンチャーの資金調達について)アメリカ型モデルが日本に定着しつつあるようですね。テンション高く宣伝するのはいいんですけど、技術的にできもしないことを言うのは市場をつぶしているようなものです。
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