決算資料には「テクテクテクテクは、ゲームクオリティーへのユーザー評価は高い」とあり、実際に遊んでみると要素が盛りだくさんでなかなか楽しい。「現実世界を歩きながら位置情報を基にマップを塗りつぶす」という要素もあれば、モンスターを倒してレベルアップし、強い装備をそろえて次の強敵に備えるというRPG(ロールプレイングゲーム)の要素もある。また、位置情報ゲームなのに歩かなくても楽しめてしまうのが、ものぐさな記者にとっては程よい距離感で付き合えて良かった。
しかし、F2Pのスマホゲームがサービスを続けるためには、アプリ内課金で収益を上げて運営費用を賄う必要がある。テクテクテクテクの場合、運営会社が大きな収益貢献を見込んでいた一方で、課金要素があまりに少ないというギャップを埋められなかった。
決算資料では、ドワンゴの18年通期の業績予想は「売上高50億円、営業利益20億円」とあったが、先述した18年4〜12月期の業績を見ると大きなかいりがある。テレビCMや、ゲーム内における有名キャラクターとのコラボレーション、人気バーチャルYouTuberとのコラボ企画など、ユーザー拡大に向け多額のプロモーション費用を使っていた。サービス開始当初に課金がうまくいかないゲームは他にもあるが、運営会社からの期待が高すぎた可能性はある。
ゲーム内課金については、気になるところがいくつかあった。まず、サービス開始当初は有料アイテムの「歩行石」がゲーム内で容易に入手できた。12月6日のアップデートで調整が入ったが、入手した分の歩行石を没収されることはなかった。
歩行石を使うと、かばんや宝箱の枠拡張、スプレーなどのバフアイテム(ステータスアップ)の購入、歩かなくてもマップを塗れる「となりぬり」などができる。
これらの課金ポイントは、RPG要素に偏っているという印象だった。テクテクテクテクは「一生歩けるRPG」をうたっているが、「一生歩ける」と「RPG」は独立した遊びとして成立している。自分の足で歩いて日本地図を埋めたいユーザーはモンスターを倒す必要もほとんどないので、課金するポイントがあまりない。
塗りつぶせる範囲を広げる「スプレー」を使うメリットはあるが、ガシガシ課金するほどではなかった。実際、Twitterでは無課金でランク400を超えるほどやりこんでいるユーザーもみられる。レアアイテムやモンスターを引く“ガチャ”のような直接的な課金要素がないため、どのように収益を上げるかの設計は非常に重要だ。
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