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» 2019年04月04日 07時00分 公開

「STORIA法律事務所」ブログ:弁護士が解説 “平成30年改正著作権法”がビジネスに与える「衝撃」 (1/5)

弁護士の柿沼太一さんが、著作権法改正により可能になるサービスについて解説します。

[柿沼太一,ITmedia]

この記事は「STORIA法律事務所」のブログに掲載された「平成30年改正著作権法がビジネスに与える「衝撃」」(2018年2月5日掲載)を、ITmedia NEWS編集部で一部編集し、転載したものです。

 2019年1月1日に施行された平成30年改正著作権法は、「デジタル化・ネットワーク化の進展に対応した柔軟な権利制限規定の整備」「教育の情報化に対応した権利制限規定の整備」「障害者の情報アクセス機会の充実に係る権利制限規定の整備」「アーカイブの利活用促進に関する権利制限規定の整備等」の4点をその内容としています。

 このうちビジネスに与える影響が非常に大きいのは「デジタル化・ネットワーク化の進展に対応した柔軟な権利制限規定の整備」と思われます。

これは「規制が厳しくなり、今まで可能だった行為が不可能になった」という意味の影響ではなく「許容される範囲が広くなり、今まで不可能だった、あるいはグレーだったビジネスが可能になった」という意味です。

 今回の記事では、著作権法改正により可能になったサービスについて解説してきたいと思います。なお、この著作権改正がAI開発に及ぼす影響については下記記事をご参照ください。(改正著作権法が日本のAI開発を加速するワケ 弁護士が解説

 例えば、以下のようなサービスは著作権法上適法でしょうか。

1 書籍検索サービス

特定分野の書籍を全てスキャン・デジタルデータ化した上で、特定のキーワード検索に応じて、その書誌情報や所在に関する情報の提供に付随して、書籍中の当該キーワードを含む文章の一部分を提供するサービス(例:Google Books

2 テレビ番組検索サービス

テレビやラジオで自分の関心のあるキーワードやフレーズがいつどのような形で放送されたかを調べることができるサービス(例:TVEyes

3 街中風景検索サービス

街中の風景を撮影したものでデータベースを構築し、ユーザーが周囲の風景(看板など)を撮影し検索することで、所在地の看板・店舗情報を提供するサービス(例:Google Street View

4 映画検索サービス

利用者がカメラで撮影した風景の写真に写っている建築物にまつわる映画について、タイトル等の関連情報とともに当該映画のサンプル画像や短時間のサンプル映像を提供するサービス

5 曲名検索サービス

周りで流れている音楽をスマホのマイクで取り込み、当該楽曲について、曲名やアーティスト名、アーティストの写真や楽曲の一部出力するサービス(例:Shazam

6 評判情報分析サービス

特定の情報(例えば店舗や企業、施設、人物等)についての評判に関する情報について、ブログや新聞、雑誌等で掲載されているのか等を調べることのできるサービス(例:ホットリンク社の「クチコミ係長」

7 論文剽窃検出サービス

検索対象の論文(例えば、研究機関に提出される論文)について、その論文と同じ記述を有する他の論文の有無を示すことにより、論文の剽窃の可能性を検出するサービス(例:アンク社の「コピペルナー」

「所在検索サービス」「情報分析サービス」を立ち上げる際にチェックすべき事項

 これらのサービスは、いわゆる「所在検索サービス」「情報分析サービス」といわれるサービスですが、共通しているのは、いずれも「事業者による情報収集・蓄積」(Web上の情報であればクローリング)→「事業者によるデータベース(DB)の作成・蓄積」→「ユーザーからのリクエストに応じて事業者が何らかの結果を提供する」という流れのサービスであることです。

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 事業者が「収集・蓄積する情報の種類」は、ものすごく大ざっぱに分類すると「インターネット上の情報」と「現実世界の情報」に分かれます。

 また、「提供される結果の内容」についても、「収集した著作物の利用(自動公衆送信等)を伴うものと伴わないものがあります。

 上図を別の視点から整理したのが下記の表です。このように「所在検索サービス」「情報分析サービス」を立ち上げる際には、「収集・蓄積する情報の種類」と「提供される結果の内容」に分けて考えると分かりやすいです。

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 例えば、先ほどの「書籍検索サービス」では、「収集する情報」は、「現実に出版されている書籍内及び当該書籍に関する情報」であり、「提供される結果の内容」は、「書誌情報や所在に関する情報(これは収集した著作物の利用を伴いません)及び「書籍中の当該キーワードを含む文章の一部分(これは収集した著作物の利用を伴います)」です。

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 次に、「評判情報分析サービス」であるホットリンク社の「クチコミ係長」では、「収集する情報」は「ネット上の口コミ情報」であり、「提供される結果の内容」は「投稿数の推移」「話題内容の傾向」「時期による傾向」(「分析結果」であって収集した著作物の利用を伴わない)というサービスのようです。このようなサービスですと、以下の図のような整理になります。

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