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» 2019年04月12日 07時00分 公開

これからのAIの話をしよう(スケート編):元フィギュアスケート選手とディープラーニングの華麗な出会い 「選手の役に立ちたい」社会人大学院生の挑戦 (1/5)

プロでが見ても判断が分かれるフィギュアスケートの採点方法にAIを活用できないか? 元フィギュアスケート選手の廣澤聖士さんは、ジャンプの回転不足に着目して映像分析を進めている。

[松本健太郎,ITmedia]

 2月24日、スポーツアナリストおよびスポーツデータ分析に興味のある人向けのイベント「Sports Analyst Meetup」が報知新聞社で開催されました。野球やサッカーなどメジャーな競技以外に、F1や登山、自転車など「そもそもどういうスポーツで、どうやって分析するの?」と考えさせられるものも多く、いろいろな示唆を得られました。ちなみに筆者も、ゴルフをお題に発表させていただきました。

フィギュア 元フィギュアスケーターで慶応義塾大学 社会人大学院生の廣澤聖士さん

 中でも異彩を放っていたのが、フィギュアスケートに関する発表をした慶応義塾大学 社会人大学院生の廣澤聖士さんです。日本スポーツ振興センターにも所属しており、トップアスリートたちの映像分析サポートもしています。

 学部時代は自身もフィギュアスケート選手として氷上を滑っていた廣澤さん。「フィギュアスケートの採点方法が難しすぎる」ことに問題意識があり、中でも勝敗を分ける「ジャンプの回転不足」に注目したといいます。

 私たちのような素人も、テレビでフィギュアスケートの試合を見ているときに「何でこの選手の点数がこんなに低いの?」と疑問に思うことがしばしばあります。

 (1)一見しただけでは分からないような細かな違いが勝敗を分ける、(2)選手自身も自分がどのように評価されるのか分からなければ練習に生かせない――こうした課題を解決しようと、廣澤さんは画像認識技術を使ってフィギュアスケートにおける「ジャンプの回転不足」をAIで判定しようと試みています。

 その内容は3D CNN(映像などの3次元データに畳み込みニューラルネットワークを適用)とSVM(サポートベクターマシン、教師あり学習を用いるパターン認識モデルの1つ)を組み合わせた本格的な映像分析で、かなり感銘を受けました。

注:3D CNNでは「C3D」という動画の分類機を用いた

 競技の判定に画像認識を活用した事例では、富士通と国際体操連盟による体操の採点支援システムが有名です。これは3Dレーザーセンサーを活用して競技者の動作をセンシングし、数値データとして分析して正確な判定を支援するというもの。目視による判定だけだとブレが生じる体操の判定を機械でサポートする試みは、フィギュアスケートにも通じるところがあるでしょう。

 このシステムの画期的な点は、選手に特別な装置などを付けなくてもカメラ映像から必要なデータを取得できる点です。廣澤さんがいまの映像分析のアプローチに取り組むもの同じ理由からでした。

 廣澤さんは修士課程まではスポーツバイオメカニクスの研究をしていましたが、こちらは大掛かりな装置が必要になることもあり、被験者である選手たちに大きな負担がかかります。

 そうした課題に悩んでいた中、現在指導を仰いでいる慶応義塾大学理工学部の青木義満教授(電子工学科、博士(工学))に出会い、ディープラーニングを活用した映像分析にかじを切っていったのです。

 複雑で分かりにくいフィギュアスケートの採点方法ですが、なぜ「ジャンプの回転不足」に着目したのでしょうか。

連載:これからのAIの話をしよう

いま話題のAI(人工知能)には何ができて、私たちの生活に一体どのような影響をもたらすのか。AI研究からビジネス活用まで、さまざまな分野の専門家たちにAIを取り巻く現状を聞いていく。

(編集:ITmedia村上)

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