下田社長が最も重要だと強調するのが、最初に行う「要件定義」だ。提案したスケジュールや役割分担などがふわっとしていると、クライアントからのリクエストも強くなっていく。「最初に信頼関係が築けないと、お客さんは暴君になってしまいます。入り口でうまくいっていないプロジェクトは、そのまま続けてもうまくいきません」(下田社長)
クライアントがやりたいことを全てヒアリングした後に、こなすべきタスクを100個リストアップしたとしよう。その100個のタスクにどう優先順位を付けるのか、そもそも100個全てをこなすのか、このタスクをこなすために各部門で具体的にどのような作業が発生するのか、それをどのようなスケジュールで行うのか――プロジェクトの全体像が分かる体制図の作成は欠かせないという。
例えばシステム開発の場合、エンジニアたちは自分たちが何をすべきか把握していないと作業に取り組みようがない。先が見えないことへの不安やいら立ちは開発を請け負うベンダーやプロマネにぶつけられる。こうしたすれ違いを防ぐには、始まりが肝心だ。
また、プロジェクトが走り出してからは、チームを巻き込むリーダーシップがないと先へ進めないことがある。
下田社長は「リーダー不在のプロジェクトほど悲しいものはありません。誰かが解決してくれるだろうという空気になっているときは、プロマネが音頭を取りましょう。プロジェクトが回り始めれば、他のメンバーも能動的に動き始めるものです」と説明する。
予算が大きくなると、関わる人数も増えてスケジュールも長期化する。下田社長がプロマネを務めたシステム開発では、数億円規模で数百人が1年以上かけて関わるような大規模プロジェクトも少なくない。人数が増えると部門や個人ごとの責任の所在も曖昧になり、思うように動いてくれないメンバーも出てくる。
こうした課題を解決するには、ガバナンスが効くような体制を作ることが重要という。下田社長が体制図を作るときは、「役員や部長レベルの意思決定者をしっかり巻き込めているか」を重視する。具体的には「責任の所在をはっきりさせるため、チームの責任者は必ず1人にする」「図版には担当者の名前だけでなく、責任と役割まで明記する」などを心掛けている。やる気がないメンバーも、上司が動けば動かざるを得ない。
「日本企業はボトムアップで解決できることは少ないです。特に大手の場合はそうでしょう」と下田社長。外部プロマネの場合は、社内全体を動かす権限を持つ役員レベルの担当者と直接コミュニケーションできるパイプを作っておくことも重要だと指摘する。
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