プロジェクトを管理する上でしばしば発生するトラブルの1つが、「現場からの進捗報告と実態に隔たりがある」という例だ。例えばシステム開発の現場から「80%の進捗率です」と報告があっても、プロマネから見ると求めるクオリティーに達していない場合がある。
「日本の大手SIer業界などは、クライアントに対して『予定より遅れています』と言ってはいけない不文律があるように思います」と下田社長は指摘する。また、現場では本当に「80%の進捗」と思っているケースもある。そうした認識のずれを防ぐには、求められる成果のレベル感を事前に合わせておく必要がある。
下田社長は次のことを実践している。
「会議をしたらすぐにTodo整理や役割分担を行い、こちらが伝えたいことがきちんと伝わっているかどうかを確認します。同じ現場にいなくても、Slackなどのツールを使って小まめにメンバーたちとコミュニケーションを取っています」
プロマネは常にプロジェクトの現場に常駐できるわけでない。対面と遠隔のコミュニケーションの両方を密に取ることで、臨機応変に課題やリスクに対処できるというわけだ。
最近はAIブームの盛り上がりもあり、自社の製品やサービスにAIを活用しようとする会社も増えている。下田社長は「AIの依頼はシステム開発よりもふわっとしていることが多く、AIで何かやりたいが実現したいことがよく分かっていないというケースもあります」と話す。
その場合は、クライアントのビジネスを理解し、機械学習を使うことでその製品やサービスで何ができそうかを一緒に考える。また、AIプロジェクトは成果が出るか分からないという理由から、システム開発に比べて予算も少なく、関わる人数が10人程度のことも多い。どちらかといえば、サービスの方向性を決めて開発を進める「プロダクトマネージャー」的な役割を求められることが多いという。
また、AIプロジェクトは実運用まで行かず、PoC(概念実証)で終わってしまうことも珍しくない。下田社長は「AIは実際にやってみないと分からないことが多いので、PoCの先にいけるかどうかは経営者の腹のくくり具合によると思います」と語った。
AIのモデルは「作って終わり」ではない。新たにデータを取得し、それを学習させてモデルの精度を上げていく試行錯誤が求められるため、経営者がそこにしっかりと投資できるかどうかは大きなポイントになってくるだろう。
プロマネの役割と業務は多岐にわたる。これらの業務の80%がAIに代替されるとプロマネ的には楽かもしれないが、まだまだ先の話だろう。下田社長は「プロマネは、ビジネス側とシステム側の両方を分かっていて、両者をつなぐ通訳ができる人」と語った。最近さまざまな企業が取り組んでいるAIプロジェクトも、データサイエンティストやAIエンジニアと、ビジネスサイドにいるユーザー部門で意思疎通がうまくいっていないケースが散見される。
データサイエンティストが翻訳者の役割を求められることもあるが、特定の担当者にこの役割を任すのではなく、部門を横断するプロジェクトでは、部門間での歩み寄りも必要になってくるだろう。
泥臭いコミュニケーションを続け、最終的な判断は人間が下す――ということに、しばらく変わりはなさそうだ。
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