ヤフーが提供するカーナビアプリ「Yahoo!カーナビ」のiOS版が、Appleの車載システム「CarPlay」に対応した。対応カーナビにiPhoneを接続すれば、車載ディスプレイを直接操作してナビゲーションできる。しかし、現時点で使える機能は、iPhone単体での利用時に比べて大幅に少ない状況だ。その理由と今後の機能追加予定を開発担当者に聞いた。
Yahoo!カーナビ(iOS/Android、無料)は、2014年7月31日にリリース。これまでに1500万ダウンロードを突破し(19年3月)、現在もApp Storeのナビゲーションランキングで上位に位置する人気アプリだ。ネット経由で地図を読み込むため、オフライン環境では使えないが、常に最新の地図データを使えるのが強み。
Yahoo! JAPAN IDでログインすれば、日本道路交通情報センター(JARTIC)が提供する交通情報(VICS)や、ユーザーから送られてきた匿名の走行データ(プローブ情報)を合わせたリアルタイム交通情報も地図上に表示できる。他にも加速度センサーを使った運転力診断や、駐車場のオンライン決済、トンネル内での自車位置推定、人気アニメとのコラボ(終了済み)など、無料でありながら意欲的な機能が多いのも特徴だ。
AppleのCarPlayは、iOS 12以降でサードパーティー製ナビアプリの利用を開放。従来は純正のAppleマップしか使えなかったが、今は「Googleマップ」「Waze」「カーナビタイム」などのカーナビアプリに対応している。
ヤフーの金木雄太さん(ローカル検索本部 事業開発部)によると、iOS 12がリリースされた18年9月以降、ユーザーからYahoo!カーナビのCarPlay対応を望む声が非常に多く寄せられていた。CarPlay対応カーナビを搭載する車種や、カーナビアプリユーザーの増加も、Yahoo!カーナビをCarPlayに対応させる後押しとなったという。
CarPlayで使えるYahoo!カーナビは、iPhone単体での利用時に比べて機能が大幅に限られている。右左折時の音声案内や、履歴/地図上からの目的地設定、自宅/職場の目的地設定、コンビニやガソリンスタンドなどの施設アイコン表示、駐車位置保存には対応するが、目的地のキーワード検索や高速道路の分岐イラスト表示などには対応していない。
CarPlay接続時に使える機能が少ない理由について、ヤフーの菊池七瀬さん(ローカル検索本部 デザイン開発部)は、CarPlay側の制限によるものが大きいと話す。
「(iPhone単体で使う)アプリとCarPlayでユーザーに届けたい体験は同じ。デバイスによってできることは異なるので、これまでの経験を総動員してCarPlayで表示するUI(ユーザーインタフェース)を一から設計している。CarPlayのアプリにはある程度のUIテンプレートが用意されており、情報の表示方法が決まっている。(CarPlayのルールに)合わせつつ、iPhone単体での利用時と比べても違和感のないように開発していく」(菊池さん)
例えば、高速道路の分岐イラスト表示は海外で需要が低く、従来のCarPlayでは表示できなかったという。今後は分岐イラストに加えて、目的地をあらかじめブックマークできるキープ機能や、CarPlay上での設定変更機能などを順次追加するという。
一般的なカーナビ専用機は、GPS情報に加えて車両本体から取得した車速パルス情報から高精度な自車位置の割り出しを実現している。一方、スマートフォンのカーナビアプリは主にGPS情報を使って現在地を表示するため、専用機と比べると精度が落ちてしまう。
Yahoo!カーナビのCarPlay対応によって、車速情報を使った位置推定に期待する声もあるが、残念ながら車両情報のデータ取得がアプリ側に開放されておらず、使えていないという。
CarPlayはiPhoneのみ接続できる仕組み。同様の機能として、Googleは「Android Auto」を提供しているが、こちらは現在もサードパーティー製ナビアプリの利用が開放されていない。ヤフーは対応され次第、Yahoo!カーナビの対応を検討するという。
Yahoo!カーナビは無料である点が人気の大きな要因でもある。これまでスマートフォンアプリ上では微少の広告表示があったが、CarPlay上での広告表示は仕様上難しいと考えられる。CarPlayを使うユーザーが増えるほど、広告を露出させられる機会は減りそうだ。
収益化についてヤフーの齋藤聖隆さん(Yahoo!カーナビ サービスマネージャー)は、「ユーザーの要望を重視してCarPlay対応に至った。収益に関しては、メディア全体や他の自社サービスで賄っていく」との考えを示した。
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