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新元号と新紙幣のフォントとデザインデジタルネイティブのためのフォントとデザイン[特別版](2/5 ページ)

» 2019年04月26日 20時55分 公開
[菊池美範ITmedia]

最後の“現実紙幣“となるのか、それとも……

 新元号の発表に続いて話題になったのが、2024年に発行を目指しているという日本円の1万円札、5000円札、1000円札のフォントとデザインだ。デザインは財務省ウェブサイトでそのイメージを確認することができる。これについても議論が交わされ、疑問も多く提示されている。

photo 新紙幣のデザインイメージ(出典:財務省ウェブサイト

 文字デザイン上のポイントでは、金額を表すメインの数字が、漢数字からアラビア数字にかわったことにも注目が集まっている。不思議なことに現行の紙幣が新紙幣として発表されたときは表面の聖徳太子が福沢諭吉に変わった、とか、裏面の絵柄についてのコメントが多かったように記憶しており、数字の形についてはほとんど意見を記憶していない。

 これは明治以降、漢数字で金額を一番大きく扱うという枠組みが大きく変わっていなかったことにあるのではなかろうか。紙幣の原図を描く工芸官の方々も大変なご苦労があったことだろう。まずは原図制作に携わった方々に「たいへんなお仕事でしたね。形にしていただきありがとうございます」と、ひとこと申し上げたい。通貨を取り巻く環境も大きく変化している現在、これが最後の大掛かりな幣の刷新になるかもしれないのだ。

 ただし、数字の字型や紙幣全体のバランスについてはIT業界の「開発発表」で披露される製品のモックアップと同じようなレベルではないかと思っている。なので、発行までに完成度が高まることを期待したい。

 1万円札と1000円札でアラビア数字「1」のデザインがの字形が異なるという疑問点については、どちらかに統一しても良いのではないかという印象を持っている。理由はどちらの「1」も数字の1として認識できること、「1」のデザインが1万円札と1000円札を区別させる必然性があまり感じられないことだ。ユニバーサルデザインの見地からも疑問が残る。紙幣のサイズ、色、絵柄のデザインに加えて、はたして数字の形でも区別される要素が必要なのだろうか。

 「1」の字形は1万円札のほうが良いとする意見が多いと予想するが、こぶりなゴシックのように「1」形がシンプルな一本線の書体もきちんと存在する(ただし、こぶりなゴシックの数字と新紙幣「0」の数字は字形がかなり異なる。共通するのは「1」の数字だけだ)。

photo こぶりなゴシックのW3ではやや細いが、文字のアウトラインを太らせて左右幅を95%前後にすると印象が近くなるものの、0(ゼロ)の楕円がこの解像度でもかなり異なることがわかる。実際の紙幣になったときは、こぶりなとは印象が異なるだろう(出典:財務省ウェブサイト

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