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新元号と新紙幣のフォントとデザインデジタルネイティブのためのフォントとデザイン[特別版](5/5 ページ)

» 2019年04月26日 20時55分 公開
[菊池美範ITmedia]
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データや記号としての文字であっても、フォントとデザインに意味を込める

 元号と新紙幣についてさまざなご意見が飛びかっていたとき、私はこんなことを考えていた。元号の持つ意味は考え方や立場によって見方も解釈も変わる。その多様性を受容しつつ、自分なりの解釈を楽しんでいる。「令和」の書体やフォントによる違いについても同様だ。

 先日、エストニアの行政サービスを日本にいても利用することが可能になるe-Residencyカードをエストニア大使館で受け取ってきた。担当された参事官とお別れするとき新元号の話題を振ると「新しい元号をどう思ってますか」と尋ねられたとき、「好きですよ。とくに「和」の文字が入っているのが良いですね。平和の和ですし」とお答えした。参事官は「なるほど、昭和にも和が入っていますしね」というリアクションをいただいた。時代の運命が生んだ新元号。日本と世界にとって平和の象徴となり、すべての方々にとって平和と調和の言葉であることを願っている。

 新紙幣についてはこう考えている。電子マネーはリアル紙幣のバックアップ(日常生活の利便性向上)であり、リアル紙幣は電子マネーのバックアップ(災害時や通信インフラ途絶時の臨時売買手段)であると。つまり、お互いを欠かすことができない相互バックアップなのだ。この持論は以前から電子出版と紙書籍の関係についても同様の考えを持ち続けてきた。存在意義や定義が変わってリアルマネーが通貨の主流でなくなったとしても、紙の紙幣や硬貨はすべてが駆逐されるわけではない。そのために、記号や数字としてだけではない「存在」が、書体やフォント、文字としての「語感」を楽しむ豊かさがあると考えている。新紙幣が少しでも愛されるデザインとして完成することを期待している。

 次回こそは、フォントを楽しむためにフィールドに出かけた成果をお目にかけられる予定である。お楽しみに。

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