連載第4回目となる今回は予定を変更して、新しい元号である「令和」と、新しい日本円紙幣のフォントとデザインについて考えてみたい。
新元号については本原稿が掲載される翌週には「令和元年」となるが、発表された新紙幣のデザインはまだ完全版ではなく、発行も2024年を目処としている。このため新紙幣発行までは紙幣のデザインが変更される可能性があることをお断りしておく。
スマートフォンやSNSの普及で、誰もが気軽に情報を発信できるようになった今、「どう発信するか」を考える上で、欠かせないのがフォントやデザインです。「最近ここのフォント変わったな」「このロゴどうやってデザインしたんだろう」と、身近な文字が気になっている人も多いのではないでしょうか。
この連載では、街角やビジネスの現場など身のまわりにある文字をきっかけに、奥深いフォントとデザインの世界をご案内します。いつも使っているスマートフォンやデジタルカメラを片手に、ひとときの「フォントの旅」を楽しんでみませんか。
1980年代末からパーソナルコンピュータをデザインワークに取り入れ、1990年代〜現在までグラフィック、エディトリアルデザインの分野でフォントの適切な使い方にこだわったデザインワークを続ける。「ITmedia NEWS」のロゴの「ITmedia 」部分のデザインも担当している。
4月1日に発表された新元号の「令和」については多彩な議論と疑問がメディアやSNSで展開されているが、ここでは書体やフォントをデザイン面でどう捉えるかという点にポイントを絞る。
「令和」の「令」について「書体によって形が異なるけど、どちらを使ったいいの? 書いたらいいの?」という疑問が最大のポイントだろう。これについては文化庁から参考になる公式文書のPDFが公開されている。
この文書を読むと「どちらが正しい」とか「どちらが誤り」というものではなく、12ページ、20〜26ページ目あたりを読んでみれば、書体によって字形が異なることに目くじらを立てることはないということが理解できる。むしろ今回の改元をきっかけに、国語教育の現場で書体やフォントについての関心が高まる良いチャンスなのではないだろうか。ちなみに「令」の漢字は常用漢字であり、小学校で習う漢字だ。
すべては網羅していないが、モリサワ、フォントワークスでリリースされている代表的なフォントを、公式サイトのフォントサンプル入力画面から「令和」と入力して比較してみた。
比率でいえば、部首の「ひとやね・ひとがしら」の下にある3画目が「一(いち)」の形か「、(てん)」の形かというところが見かけで違って見える大きなポイントだ。こうやって多くのフォントを一覧にしてみると、書体として多数派なのは「一(いち)」のほうであることがわかる。興味深いのは、簡体字・繁体字ともモリサワの中国語フォントでは3画目が「、(てん)」であることだ。また、この図には載せていないが、CJK(中国語・日本語・韓国語)の文字もセットとしてフォントに含まれている源ノ明朝体・源ノ角ゴシック体の3画目は「一(いち)であり、Adobe InDesignの文字パレットで異体字を探しても3画目が「、(てん)」で表された字形は出てこない。
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