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» 2019年05月07日 15時18分 公開

経産省がドイツの家電見本市「IFA」と手を組んだ理由 (1/3)

世界最大級の家電見本市「IFA」で2年前に始まった「IFA NEXT」。今年は新たに「パートナー国」という制度が設けられ、最初の国として日本が選ばれた。では、パートナー国とはどのような位置付けなのだろうか。

[本田雅一,ITmedia]

 毎年、9月初旬にドイツのベルリンで開催される世界最大級の家電見本市「IFA」は、改革の最中にある。1924年に始まった「大ドイツ放送展」を源流としながら、家電にシフトして成長してきたIFAは、PCなどデジタル領域も巻き込み、近年は自動運転技術を背景とした新モビリティなどにもジャンルを拡大している。中でも2年前に始まった「IFA NEXT」は、IFAを主宰するベルリンメッセが「新たなイノベーションを生み出す場」として力を入れている展示だ。

 過去2年を振り返ると、IFA NEXTではスタートアップを一つのホールに集結させる一覧性の高いブース構成でありながら、伝統的な家電メーカーのブースなどに比べて開放的だった。テクノロジスタートアップ中心の展示は、相互の人材交流を含めて流動性が高く、新たな創造性をイメージさせるのに十分だった。このIFA NEXTに、今年は新たに「パートナー国」という制度が設けられる。その最初の国として選ばれたのが日本だ。

IFAの「Global Press Conference 2019」でメッセ・ベルリンのクリスチャン・ゲーケCEOと経済産業省の西山圭太氏が登壇。日本が「IFA NEXT」の最初の「パートナー国」になると発表した

 では、パートナー国とはどのような位置付けなのだろうか。

 世界各国から300人以上のジャーナリストを集めて4月下旬に開催されたIFAのプレスカンファレンス「Global Press Conference 2019」(以下、GPC)では、経済産業省 商務情報政策局長の西山圭太氏が登壇し、「単に日本の技術スタートアップが参加するだけでなく、大企業内のイノベーションプロジェクトを含め、日本発の新たな取り組みが集まる場」と説明した。その上で、「日本として情報を発信する機会も設けられる」という。

 パートナー国制度の発表がGPC開催直前のことだったこともあり、具体的な展示プランなどについては語られていない。しかし、西山局長は「単に既存のベンチャー企業を紹介するだけでは意味がない。もっと包括的に、日本から生まれつつある新たなテックカルチャー、日本に多い大企業からも変革が生まれていることなど、自由度の高い訴求ができる」とした。

「未来を変えたMP3」のように

 IFAを主宰するメッセ・ベルリンのCEO、クリスチャン・ゲーケ氏は、IFA NEXTの意義について「それが、たった一つの要素技術だったとしても世の中を変えることはある」と話す。かつての「家電見本市」から総合的な技術展示会へと脱皮しようとしているIFAは、過去にも欧州発で世界を変えてきた。

 「例えばフラウンホーファー研究機構のMP3が、世界をどれほど変えたのか、思い出してほしい。その後のあらゆるオーディオ製品に影響を与えただけでなく、音楽産業のあり方、コンテンツの楽しみ方まで変えた。この技術を搭載した家電製品が発表されたのは1998年のIFAだった」(ゲーケ氏)

 IFA NEXTのパートナー国については、「IFA NEXTは、そのエリアを歩くだけで新しい発見がある場だ。そこに一国だけ“ディープダイブ”できるパートナーを作ることにした」と説明する。「日本には誰もが知る巨大企業から、小さなスタートアップまで幅広いテック企業があり、また大企業内のイノベーションプロジェクトも活発。研究開発投資にも意欲的だ。そのため、最初のパートナー国として手を握ることになった」(ゲーケ氏)

大企業からベンチャーまでを網羅する日本の展示

 経産省の西山氏は、世界中から集まった報道関係者に対し、「皆さんが持っている日本のイメージは、少々古めかしいものかもしれない」と語りかけた。「仕事中毒の男社会。年長者が優先される上下関係の強い企業が多く、文化的には外国人に対して閉鎖的。そして“ご飯”(ライス)に対する異様な執着がある」と笑いを誘う。「しかし実際にはみんなで花見に出かけて酔っ払うアルコールホリックな面があり、20代の若者が発言力を持ち新しい事業を生み出している。日本のスポーツ界は女性が活躍しているし、近藤麻理恵さんのように”片付け”の達人も有名。81歳の商用アプリ開発者である若宮正子さんなど女性の活躍はめざましい。北海道のニセコに行けば、そこは外国人の街で、国技である相撲の上位ランカーなんて外国人ばかり。これまで9人の横綱が生まれた。パンよりライスを好む? いや、実際にはパン食も好まれている」

 おそらくは定番のジョークを立て続けに披露しながら、日本を知らない多くのテック系ジャーナリストたちに次のように話した。「イメージしてほしい。すべて日本のことだ。3分ごとに電車が発車し、ほとんどのトイレは温水洗浄便座。芸術ともいえる寿司は、料理であると同時に完璧な“顧客とのコミュニケーション”だ。そして”おもてなし”。東京オリンピック2020の誘致スピーチでも知られるようになったこの言葉は、単純なコミュニケーションを超え、相手が明確な意思表示をしなくても自然に心地よく過ごせる場と空気を提供する。そんな国が日本だ」

 詳細なIFA NEXTのプログラムが決まるのはまだ先だが、説明の中で西山局長はパナソニックとネットベンチャーのユニポスを紹介した。大企業のイノベーションプロジェクトと、小さな50人規模のスタートアップ。対称的な二社を通じ、日本が世界を変える可能性を説いた。

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