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» 2019年05月07日 15時02分 公開

動画の世紀:ノートルダム大聖堂火災と9.11と陰謀論 (1/3)

パリのノートルダム大聖堂で起きた火災は、YouTubeで大きな騒動となった。9.11と結びつけた陰謀論である。

[小林啓倫,ITmedia]

「YouTubeの時代」訳者の小林啓倫氏が切り取る「動画の時代」、連載第3回目は、動画と陰謀論の関係について。


 2019年4月15日夕刻(現地時間)に、パリのノートルダム大聖堂で大きな火災が発生しました。炎は修復作業のために設置してあった足場を巻き込んで、あっという間に建物全体に広がり、屋根が焼け落ち尖塔も崩壊するという甚大な被害が出ています。幸い正面にある2つの鐘楼は残り、中にあった文化遺産も一部が持ち出され無事でしたが、多くの人々に慕われる歴史的建造物から火の手が上がるという衝撃的な映像が、ネットを通じて即座に世界に共有されました。

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 実はこの際、YouTubeでちょっとした騒動が起きています。ITmediaでも記事が掲載されていますので、詳しくは以下のリンク先を参照してみて下さい:

 簡単にまとめると、ノートルダム大聖堂の火災が起きた際、それを伝えるYouTube動画の「情報パネル」欄に9.11(2001年9月11日に米国で起きた同時多発テロ事件)の情報が掲載されていた、というもの。「情報パネル」は日本では実装されていない機能のため、これについても説明が必要なのですが、公式の説明では次のように解説されています

動画の横に、ブリタニカ百科事典や Wikipedia などの第三者から提供された情報がユーザーに表示される場合があります。このようなオンライン情報は、歴史的、科学的に確立された少数のトピックに関するもので、月面着陸のように捏造が疑われることも少なくありません。

 つまりYouTube運営側でピックアップしたいくつかのトピックについて、そのトピックに関連する動画だと思われるものには、この「情報パネル」欄に百科事典等からの補足情報が引用されるというわけですね。

 実際にノートルダム大聖堂火災ではどのような表示がされていたのか、Twitter上でスクリーンショットを載せている方がいます:

 確かにノートルダム大聖堂火災の映像の下に、「September 11 attacks(9月11日の攻撃)」というタイトルで、ブリタニカ百科事典から引用された解説記事が掲載されています。もちろん今回の火災と9.11は何の関係もありませんから、これはまったく頓珍漢な対応であり、たまたま目にした多くの人々が同様の指摘ツイートを投稿しています。

 なぜこのような事態が起きたのか。直接的な答えは、上記のITmedia記事でも紹介されているように、「情報パネルを表示するアルゴリズムの誤り」になります。要はノートルダム大聖堂が燃える映像をアルゴリズムが9.11の光景(このテロ攻撃では世界貿易センタービルに航空機が激突し、大きな火災と建物の崩壊が起きています)と誤認し、9.11の解説記事を載せてしまったというわけです(この結果、YouTubeはノートルダム大聖堂火災関連のライブストリーミング映像については、情報パネル機能を無効にするという対応を取っています)。

 しかしそもそもの話として、なぜアルゴリズムが制御する「情報パネル」などという機能が存在していたのでしょうか。

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