丸いボディーに映像を表示しながら飛行できる「浮遊球体ドローンディスプレイ」、プロペラがなくても空を飛べる「羽根がないドローン」――。NTTドコモには、他に類を見ない“飛行物体”を生み出し続ける1人の研究者がいる。
その研究者は、同社の山田渉さん(先進技術研究所 社会センシング研究グループ)。「サイエンスフィクション(SF)をサイエンスにする」をモットーとして掲げ、学生時代からモノづくりに取り組んできた。
山田さんは浮遊球体ドローンディスプレイを2017年春、羽根がないドローンを19年春に発表。ドローンらしからぬ丸いフォルムと独創的なコンセプトが注目され、いずれもSNS上で「カッコいい」「面白い」「SFみたいだ」などと話題に。イベント「ニコニコ超会議」に出展すると、ドコモブースは多くの来場者でにぎわった。
山田さんはドコモでは、ドローンの他、装着すると没入感の高いVR映像を視聴できる「超広視野角VRゴーグル」など、ジャンルにこだわらず先進的なモノづくりを担当。研究内容を論文にまとめて国際学会でも発表している。プライベートでも、ハッカソンに出場して賞を獲得するなど精力的に活動している。
山田さんの研究・開発のモチベーションになっているのが、「ドローンやコンピュータと人間が、うまく関わり合う方法を考え出したい」という使命感だ。
例えば、ドローンは以前から宅配などでの活用が期待されているものの、飛行音の大きさや人への衝突が懸念され、広く普及するには至っていない。皇居や寺社仏閣の上空にドローンを飛ばす迷惑行為もたびたび起こり、ドローンにマイナスイメージを持つ人も少なくない。
そんな中でも、柔軟な発想を持ち、構造を工夫すれば、ドローンは人間のよい“相棒”として広まるかもしれない。「ドローンが飛び回って音楽ライブやスポーツイベントを盛り上げたり、道に迷っている人を見つけ出し、フワフワ飛びながら案内したりしてもいい。工場の点検などをドローンに任せてもいいですよね」と山田さんは目を輝かせながら話す。
こうしたアイデアは、もしかすると「SFの世界じゃあるまいし、無理だよ」と実現可能性を疑う人がいるかもしれない。だが山田さんは、これらを現実のものとするため、ドコモでの仕事と並行し、東京大学大学院の博士課程にも在籍。
「ヒューマン・コンピュータ・インタラクション」(人間とコンピュータの快適な関係)研究の第一人者として知られる暦本純一教授のゼミで学び、SFに登場しそうなモノをひらめくセンスと、それを実現する技術力に磨きをかけてきた。
「いきなりいいモノをつくることはできません。暦本教授やドコモの先輩に教えを乞いながら、地道な検証を繰り返す作業の積み重ねが、発想の源になっています」(山田さん)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR