アマゾン ウェブ サービス ジャパン(以下、AWSジャパン)は5月23日、カメラ画像をもとに強化学習を活用して自律走行するミニチュアカー「AWS DeepRacer」と関連サービスを日本で初公開した。レースを通じて楽しみながら強化学習を学べるという。国内販売は未定。
AWS DeepRacerは、機械学習の一手法である強化学習を活用して制御する電動のミニチュアカー。両手で抱えられる程度の大きさで、前方にカメラを搭載した。サーキットの走り方を学習させたモデルを読み込ませると、カメラが捉えたコースに合わせ、走行スピードやハンドルを自律的に制御する。
ユーザーはAWS上に用意されたシミュレーターの仮想サーキットで学習モデルを作成する。必要に応じて各パラメーターを調整しながら学習を繰り返し、自分の学習モデルを鍛えることで、AI(人工知能)技術開発のスキルを学べるという。
調整できるパラメーターには「ハンドルを切る角度の上限」や「制限速度」などが含まれる。しかし、AWSジャパンによると、「重要なポイントは報酬関数の設定だ」という。
強化学習は、学習モデルの行動に対して報酬(正の報酬)や罰(負の報酬)を与えることで、目的を達成するための適切な行動を学ばせていく手法だ。DeepRacerでは、コースを外れずに走れたら2点、コースを外れたら0.1点を与えるなど報酬を設定すると、学習モデルはDeepRacerを制御すればポイントが増えるのかを学んでいく。いかに適切な報酬を設定できるかが開発の鍵になるという。
大日本印刷(DNP)では、AI(人工知能)人材育成のためにDeepRacerを活用している。社内でエンジニアを募り、DeepRacerの学習モデルを作りながらAI開発のスキルを学ばせているという。業務時間中に社内レースや学習手法についての勉強会を開催し、エンジニアが切磋琢磨しながらAI活用に向けて学習できる環境を整えた。
同社の福田祐一郎副センター長は、「国内外の社会課題を解決するために、AIは重要だ。そのためにはAIを扱える人材が必要」と話す。
DeepRacerは、電波法令で定める技適(技術適合証明)を取得できていないため、日本での発売時期は未定としている。国内価格も未定だが、米国での予約価格は399ドル(約3万3000円)となっている。
AWS上のシミュレーターは国内でも既に利用できる。仮想サーキットで学習モデルの性能を競う「第1回バーチャルレース」も5月31日まで開催中だ。
「ビッグデータを活用する場面でAIが求められている。それに追い付けるようにさまざまなサービスを提供していきたい」(AWSジャパンの瀧澤与一本部長)
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