「何回閉じても無駄ですよ〜」などと書かれたポップアップが繰り返し表示されるサイトのURLを掲示板に書き込んだとして、不正指令電磁的記録(ウイルス)供用未遂の疑いで神戸地検に書類送検された男性2人がそれぞれ、5月22日付で起訴猶予処分になったと、2人の弁護を担当した横浜パーク法律事務所の弁護士2人が29日、事務所のWebサイトで声明を発表して明らかにした。
起訴猶予処分は、犯罪の立証が可能でも、被疑者の境遇などから検察官の裁量によって公訴提起を控えるもの。声明では今回の処分について、「無罪立証の負担を強いられる煩を事実上避けることができたことは一安心」としながらも、「『犯罪にあたると考えるが今回だけは起訴しないでおいた』という姿勢でお茶を濁した」と検察を批判。このような摘発によるエンジニアへの萎縮効果を防ぐためにも、「潔く『嫌疑なし』に該当する判断をすべきだった」としている。
男性2人は、「何回閉じても無駄ですよ〜」と書かれたポップアップが繰り返し表示されるサイトのURLを掲示板に書き込んだ不正指令電磁的記録供用未遂の疑いで今年3月、兵庫県警に摘発され、神戸地裁に書類送検された。ネットでは、「いたずら目的で実害もないのにやり過ぎだ」といった批判が相次いだ他、Webエンジニアの間では「どんなプログラムなら摘発されるのか、アウトとセーフのラインが分からない」と困惑が広がり、サイバー攻撃を解説する勉強会を自粛するなど萎縮の動きも出ていた。
2人の弁護を担当した横浜パーク法律事務所弁護士の南竹要さんと室之園大介さんは29日付の声明で、兵庫県警による2人の検挙について「現実空間での冗談行為と同等な行為をネット空間で行っただけで刑罰に処せられるという懸念を生じさせ、プログラマーや開発者が、利用者に意外性をもたらすようなプログラムを創作する意欲を萎縮させることにつながる」と批判する。
また、不正指令電磁的記録供用罪は、「人が電子計算機を使用するに際してその意図に沿うべき動作をさせず、又はその意図に反する動作をさせるべき不正な指令を与える」プログラムの供用を処罰対象にしているが、処罰対象の定義が「意図に反する動作をさせる」「不正な指令」などあいまいだ。
声明では、「このようなあいまいな文言が放置されている結果、兵庫県警が暴走し、本来犯罪に該当しない行為をも処罰する動きをした」と指摘。今回の摘発は、「捜査機関の現代技術に対する無理解と、無理解から来る根拠のない不安感・危惧感を犯罪として構成するという理不尽な権力の行使」だと強く批判し、それによる萎縮効果が、「日本の技術開発への打撃ともなりかねない」と危惧する。
神戸地検による不起訴処分については、Coinhive事件の一審無罪判決などを受け、「公判維持は困難と検察官が判断した」と推定する一方で、「潔く不起訴処分としての『嫌疑なし』に該当する旨の判断をし、社会に広まった電脳空間における表現行為の萎縮的効果を積極的に除去すべきだった」「有罪に問えると考えているが、個別事情で起訴しないとした起訴猶予処分は、法曹の一翼を担う検察官としては、その職責を全うしていないと社会から批判されてもやむを得ない」と検察を強く批判している。
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