ディー・エヌ・エー(DeNA)は6月4日、クルマに取り付けたカメラを通してドライバーや道路の状況を自動認識し、運転状況を可視化することで商用車両の事故を削減するサービス「DRIVE CHART」(ドライブチャート)の提供を開始した。
専用の車載器をJVCケンウッドと共同開発した。車外を撮影する他、車内のドライバーも撮影する。
それぞれ画像解析をリアルタイムで行い、外向きのカメラは車間距離や車線、歩行者・二輪車の有無といった環境情報を解析。内向きカメラはドライバーの目や口などを認識することで、顔の向きや目の開き具合を取得できる。
ディープラーニングで画像を解析し、運転状況を判断する。約10万枚の画像を学習させたという。画像からの分析の他、車載器に搭載した加速度センサーとGPSで衝撃や急ブレーキなども検知する。
解析データがドライバーの居眠りなど事故に直結する状況を検知した場合はアラートで本人に知らせるが、運転傾向についてはクラウド上でスコア化し、翌日までにレポートにまとめる。
いつどこでどんなリスクのある運転をしていたかが専用アプリのマップ上に示され、当時の具体的な車内外の状況を動画で確認できる。ドライバー自身でも確認できる他、マネジャーなど管理者が確認・指導など行うことで、運転の改善につなげられるとしている。
DeNAは、京王自動車、日立物流、首都圏物流と18年4月から10月にかけて実証実験を実施。タクシー100台、トラック500台で実験したところ、過去5年平均の事故率と比べ、タクシーでは25%、トラックでは48%の事故削減効果がみられたという。
「トラックの事故最多要因は後退時の不注意で、次が追突」だと同社の川上裕幸部長(オートモーティブ事業本部スマートドライビング部)はトラックの事故傾向を紹介。トラックの事故削減率を48%と大幅に下げられたのは、「DRIVE CHARTで車間距離の傾向をドライバーに知らせたことで、実証実験中の追突事故を0件に抑えられたことが大きな要因」(同)だという。
同社常務執行役員の中島宏本部長(オートモーティブ事業本部)は、「事故の9割以上はヒューマンエラーだ」と損保ジャパンの調査を引用した上で、「従来のドラレコでは事故やヒヤリハットなどの顕在化した危険しか録画できない。制限速度超過や一時停止無視など、普段の運転中の潜在的な要因への対策が必要だ」とDRIVE CHARTの開発意義を語る。
中島本部長は最近の高齢者による運転事故にも触れ、「実際に事故が起きてから(運転が)『危なかったね』と分析しても手遅れ。DRIVE CHARTは長いスパンでドライバーの運転傾向の変化を分析できる。ご高齢の方の事故を未然に防ぐ、正面からのアプローチになるのではないか」という。
本サービスはまず法人向けに展開するが、「将来的には個人車にも展開したい」と中島本部長。
さらに、DRIVE CHARTから得られたデータを活用して将来的な自動運転技術で活用できるような高精度地図も作成していきたいという。
「まず商用車にDRIVE CHARTを載せて走り出すことで、鮮度の高いデータを得られるようになる。このビッグデータで解析精度の向上や高精度地図の作成などに生かしていきたい」(中島本部長)
「DRIVE CHART単体の技術で自動運転を実現できるとは考えていない。自動運転のキットを作るメーカーは精度向上に関しては独自でやるだろう。自動運転の社会実装時に、更新頻度の高い高精度地図を求められた際には、DeNAのビッグデータを活用していただくことはできると思う」(同)として、将来的な自動運転に向けてもソフトウェア面でサービスを展開したい考えを示した。
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