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ディープラーニングは何ができる? エンジニア以外も知っておきたい注意点よくわかる人工知能の基礎知識(1/3 ページ)

» 2019年06月05日 07時00分 公開
[小林啓倫ITmedia]

 ビジネスにも役立つAI(人工知能)の基礎知識について解説する本連載。第3回で、機械学習とディープラーニングの概念について整理し、第4回では機械学習の種類について解説した。今回はディープラーニングについてもう少し深掘りしてみたい。

連載:よくわかる人工知能の基礎知識

いまや毎日のようにAI(人工知能)の話題が飛び交っている。しかし、どれほどの人がAIについて正しく理解し、他人に説明できるほどの知識を持っているだろうか。本連載では「AIとは何か」といった根本的な問いから最新のAI活用事例まで、主にビジネスパーソン向けに“いまさら聞けないAIに関する話”を解説していく。

(編集:ITmedia村上)

ディープラーニングの仕組み

 既に解説した通り、ディープラーニングは機械学習の一種で「機械がデータに基づいて自ら学習する能力を持つ」ことを実現する技術である。

 ディープラーニングでは、機械が学習するために「ニューラルネットワーク」というアルゴリズムを使う。ニューラルは「神経細胞(ニューロン)の」という意味で、ニューラルネットワークは人間の脳(神経細胞のネットワーク)の働きを模したアルゴリズムであるため、このような名前で呼ばれている。

 ニューラルネットワークの構造は、文字通りネットワークになっていて、脳でいえば個々の神経細胞に相当する「ノード」がつながり合う姿をしている。ネットワークは複数の層から構成され、「入力層」「隠れ層」「出力層」の3種類に分けられる。

 例えば、画像に写っているのがネコかどうかを判断するニューラルネットワークがあるとしよう。「入力層」は外部からのデータ、この例では画像データを受け取る層で、「出力層」は最終的なデータ、すなわち「これはネコの画像と考えられる」という判定結果を出力する層になる。

 その間にあるのが「隠れ層」で、それが入力層と出力層の間をさまざまな経路でつないでいる。それぞれの経路には「重み」という要素が与えられており、ある性質が最終的な判定にどの程度重要になるかを左右する。データを使ってニューラルネットワークを訓練すると、この経路と重みが変化し、最終的に正しい結果が出力されるようなネットワークが形成されるのである。

AI ディープラーニングの概念図(筆者作成)

 ディープラーニングの場合、この隠れ層がいくつも積み重なり、出力層が非常に深い位置にあるニューラルネットワーク(ディープ・ニューラルネットワーク)が使用される。そのため「ディープ(深層)・ラーニング(学習)」と呼ばれるわけだ。

 ごく簡単に言ってしまうと、この隠れ層を多くしていくほど複雑な判断ができるようになる。そしてニューラルネットワークという概念自体は20世紀の半ばから存在していたのだが、隠れ層を増やしても思うように精度を上げることができない期間が続いていた。

 しかし近年になり、この問題を乗り越える研究が進んだことや、コンピューティング能力の向上により膨大な量の計算が短時間で行えるようになったことで、ディープラーニングの性能が一気に向上。2012年のGoogleによるネコ画像の認識や、16年の囲碁界におけるAlphaGoの歴史的勝利など華々しいニュースが続いたことで、ディープラーニングに対する注目は急速に高まった。いまでは隠れ層が100を超えるニューラルネットワークを活用したAIも登場し、現在の第3次AIブームをけん引する技術となっている。

FNNとRNN

 以上がディープラーニングの簡単な仕組みの説明だが、その中核となるニューラルネットワークは、どのような構造を持つかや、その中でどのようなデータ処理が行われるかによって、種類が細分化される。ディープラーニングが使っているのは「ディープ・ニューラルネットワーク」だが、隠れ層がないか、数層しかないような「ディープではない」ニューラルネットワークというものも存在する。

 ディープラーニングをひとくくりにするのではなく、その種類まである程度理解しておくことの重要性を示すために、ここでは「FNN」と「RNN」という2種類を取り上げ、解説してみたい。

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