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学校の百葉箱にIoTセンサー プログラミング教育必修化で教育現場の風景は変わる?

» 2019年06月07日 17時04分 公開
[谷井将人ITmedia]

 小学校などの敷地内にある謎の白い箱──「百葉箱」(ひゃくようばこ)を覚えているだろうか。直射日光や雨を防ぐ気象観測用の箱で、中には温度計、乾湿計、気圧計などが置かれている。そんな百葉箱とIoTデバイスを組み合わせた使い方が教育現場で生まれている。

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IoTセンサーを設置して“IoT百葉箱”に

 学校にある百葉箱といえば、理科の授業で中にある温度計の値を定期的に確認し、ノートに記録。その結果をグラフにして考察する──そんな経験がある人は少なくないだろう。

 だが最近、とある小学校で温度計の代わりにIoT温度センサーを使った“IoT百葉箱”を実験的に用意。センサーで検知した気温が教育用タブレットに定期送信される仕組みを整え、集まったデータを表計算ソフトにまとめてグラフを作り、子供たちが考察する──といった流れが生まれているという。

 この事例で使われたのは、さまざまな内蔵センサーで周囲の明るさや気温などを検知するソニーのIoTブロック「MESH」だ。検知した情報をBluetooth経由で外部に送信。専用のアプリと組み合わせてIoTシステムを作れる。

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 MESHを活用した授業を提案するソニービジネスソリューションは、教育関係者向けイベント「New Education Expo 2019」(東京・6月6〜8日、大阪・14〜15日)にMESHを出展。百葉箱のエピソードを紹介してくれた展示担当者によれば、当初はMESHが教育現場で活用されることを想定していなかった。

 MESHは一般向け製品として販売していたが、同社にはIoT百葉箱のような「学校の授業で使った」という教師からの話が届くようになったという。これを受けて、MESHをIoT教材として使えないかと検討し始めた。

 そこで同社は専門家の監修のもと、MESHを使ってさまざまな課題解決を図るアイデアを集めた教師向けの教材を用意。例えば「図書室の高い棚にある本は取れず困っている人がいる」「教室の床にある段差で、目の不自由な友達がつまづいてしまう」といった課題に対して、「低い位置にボタンを設置して、図書委員や先生に知らせるようにする」「人が段差の近くに来たら、警告音を鳴らす」など、MESHを活用した解決方法を指南。教師がMESHを活用した授業のアイデアを考えやすくしたという。

 2020年には小学校でプログラミング教育が全面実施される。授業でプログラミング的な思考力や創造性、問題解決能力などの教育を行う場面も増えてくるが、「授業の中で何かを完成させようとすると時間が足りず授業を作りにくい」と悩んでいる教師もいる。小学校の授業は1コマ45分と非常に短く区切られている。その時間の中で複雑なプログラミングを行うことは難しいが、MESHのようなIoTデバイスであれば作業に時間がかからないため、実際にシステムを作って試行錯誤し、解決策を探っていくといった授業を作れるという。

 展示担当者は「MESHはアイデア次第でさまざまな活用方法が考えられる。ぜひ現場の先生には考えを巡らせてほしい」と話した。

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