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授業の発表はGoogleスライド、フォームで模擬選挙も 学校教育で進むWebサービス活用 リードする埼玉県に聞いた(2/2 ページ)

» 2019年06月17日 07時00分 公開
[谷井将人ITmedia]
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 座学のやり方も大きく変わる。これまで教師が黒板に向かって板書している間は授業が停滞していた。しかし、事前に授業スライドを作り、授業中はプロジェクターで投影することで、板書の時間が削減できる。スライド自体を生徒と共有すれば、生徒は手元のChromebookからメモを書き込める。資料のプリントを前の席から回す必要もない。

 アクティブラーニングを取り入れた授業では、生徒たちが数人のグループで共同作業をすることがある。与えられた問題を解くために調べ物をし、話し合いながら解決策を探り、結果をスライドや文章にまとめて発表するという流れだ。Webアプリを使えば、調べ物の結果を一つのドキュメントで共有したり、スライドを共同編集したりできる。資料を共同編集できる点が、Webアプリとアクティブラーニングの相性がいい理由の一つだという。

 最新のICTツール導入で、一見すると大きな効率化が図れているように見える。しかし、現場から拒否反応はなかったのか。

教師の反応は「思ったより好印象」

 教師は普段、Windowsを搭載するPCで仕事をしているため、OSの違うChromebookの操作に戸惑う場面もあるという。しかし、OSの自動アップデート機能や、プログラムの権限が制限された領域内でしか動かせないようにするサンドボックス技術によるセキュリティ対策など、管理の面でメリットも多く、埼玉県ではChromebookを採用した。操作方法は導入時に教師向けの研修を行ったという。

 あらゆる教科の授業でICTを活用する動きは、ごく最近の出来事だ。とはいえ教師は成績管理や授業で使う資料作成などの事務作業をPCで行っているため、PCを使うことに大きな抵抗はないようだ。紙や手書きへのこだわりが強い人もいるようだが、最近のWebアプリは操作が直感的で、予想よりも現場の教師からは好印象だという。

 とはいえ、教育現場のICT化には課題もある。公立学校の場合、PCやWebサービスは地方自治体の担当者が選定して導入する。自治体にもよるが、話を聞いた担当者はPCやWebに詳しかったわけではないという。導入する機材やセキュリティ対策についての知識を身に付けるのはなかなか難しく、導入のハードルになりそうだ。

「整備したままではいけない」

 文部科学省が17年に公示した新しい「学習指導要領」や「教育のICT化に向けた環境整備5か年計画」の中で、コンピュータの台数やICTを支援する職員の人数に関する基準が示された。各自治体もそれにならい、環境整備の機運が高まっているが、プロジェクト開始当初は「時期尚早ではないか」「環境整備しても無駄になるのでは」という議論もあったという。

photo 「教育のICT化に向けた環境整備5か年計画」

 教育のICT化を担当する職員は「教育用端末の整備は必要だが、整備したまま使われないようでは無意味」と話す。埼玉県でも、国が示す基準には達していないという。担当者は「今後も生徒用のタブレットPCの導入を進めていきたい」と語った。

 ICTツールの活用法は教師や授業によってさまざまだが、これらは必ず使う必要はない。効果的に活用する方法を常に模索することも必要だと感じた。

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