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ニュースプラットフォームとしてのTikTok動画の世紀(2/2 ページ)

» 2019年06月26日 15時25分 公開
[小林啓倫ITmedia]
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日本でもTikTokに注力する新聞社が

 実は日本でも、TikTokに公式アカウントを開設した新聞社があります。それはスポーツニッポン新聞社(@sponichiofficial)。今年1月、ねとらぼでも紹介記事(新聞ってこうやって作るのか! スポニチ「TikTok」アカウントが人気、立ち上げの経緯を聞いた)が掲載されています。同社のTikTokコンテンツは、新聞の第一面が出来上がるまでを短く(タイムラプス風に)まとめて見せるというもの。例えばこちらは、今年2月に「ダルビッシュ191日ぶり実戦登板」を伝えた際の紙面の制作過程。

photo スポニチのTikTok公式アカウント

 紙面に躍る「幸せ」というダルビッシュのコメントに合わせたのでしょう、坂本九の名曲「幸せなら手をたたこう」に合わせて、白紙の紙面から迫力ある第一面が完成する様子を見て取れます。この形式がどこまでTikTokの視聴スタイルやユーザー特性にはまるかはまだ分かりませんが、例えば今年5月に、大リーグの大谷翔平選手が今シーズン第1号ホームランを放ったことを伝える投稿には、現時点で約2000件の「いいね」が寄せられています。

 プラットフォームの特性に合わせてコンテンツを調整し、ニュースを配信する――映像とは離れますが、同じことがいま、スマートスピーカーの世界でも起きつつあります。

 TikTokと同じく、ユーキャン新語・流行語大賞にノミネートされた(こちらは2017年ですが)スマートスピーカー。昨年末にデロイトトーマツコンサルティングから発表されたアンケート調査によれば、日本での所有率はまだ全体の3%ほどにとどまっているものの、米国での世帯普及率は40%を上回ったそうです。そのため報道機関も「ニュース配信プラットフォーム」としてのスマートスピーカーに注目しており、各社が取り組みを始めています。

 例えば今年1月、ニューヨークタイムズ紙は、Amazonのスマートスピーカー向けに「The New York Times Briefing」というサービスを開始しています。このサービスにおいても、前述のStay Tunedと同じ短縮化の対応がなされていて、1本の番組が約3分間になるようコンパクトにまとめられています。また単なるヘッドラインの読み上げではなく、ユーザーに対して語りかけるような口調になるよう、工夫を行っていると同紙は述べています。彼らは今後も、「スマートスピーカーの特性を生かしたニュースのあり方」とはどのようなものか、模索するとしています。

 その意味で、私たちが問うべきは「TikTok(のようなショート音楽動画共有アプリ)はニュース配信プラットフォームになり得るか」ではなく、メディア各社やジャーナリストが「TikTokでも受け入れられるニュース配信のあり方を確立できるか」ということなのかもしれません。それを模索する過程で、私たちとニュースの付き合い方も、大きく変わっていくことでしょう。

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