少子高齢化や生活習慣病患者の増加を背景に、テクノロジーを駆使して医療を効率化・高度化する「ヘルステック」の分野が活性化している。同分野の2017年時点の国内市場規模は2055億円だったが、22年には約1.5倍の3083億円に拡大するとの民間予測(富士経済調べ)もある。多様な事業者が参入し、オンライン診療向けのシステムの他、画像や資料を電子化するサービスを提供しているが、これらと相性が良いのがクラウドの技術だ。
クラウドを活用した場合、患者は在宅のまま医師に健康状態のデータを共有したり、ビデオ通話でアドバイスを受けたりできる。医療機関は、カルテや画像を電子化してクラウドストレージに移行することで、セキュアな環境で保管し、必要に応じた検索もしやすくなる。
アマゾン ウェブ サービス ジャパンがこのほど開いたイベント「AWS Summit Tokyo 2019」に、こうした「クラウド×医療」ビジネスを手掛けるベンチャー2社が登壇。Amazon Web Servicesを活用した事業内容とその意義を紹介した。
インテグリティ・ヘルスケア(東京都中央区)は09年に創業し、在宅医療の普及支援事業などを手掛けた後、16年にヘルステック分野に参入したベンチャー。18年からはAWSベースの診療支援システム「Yadoc」(ヤードック)を提供している。
同システムは、ビデオ通話によるオンライン診療に対応する他、診療の予約や、疾患に応じた問診票の作成などができる。
問診票は、患者がスマートフォンアプリ上に症状を入力すると、重篤度を数値化した上で医師に提供し、診察をサポートする仕組み。咳や痰、息切れの頻度などを細かく聞くCOPD(慢性閉塞性肺疾患)のアセスメントテストなどにも対応する。
iOS端末の「ヘルスケア」アプリと連携し、患者が睡眠時間、栄養状態、運動量などをクラウド経由で医師に共有できる機能なども搭載。体調を効率よくモニタリングできる仕様にしている。
同社の園田愛社長は「診察時は『お加減いかかですか?』『いつもと変わらないです』といったやりとりがよく行われるが、数値化することで実態を把握できるようにしたい」と話す。
患者にクラウド経由でデータを共有してもらうことで、医師と“共同で治療している”というイメージを持たせる狙いもある。「医師が一方的に治療するのではなく、患者に主体的に参加してもらうことで、病気にならない習慣作りや疾病の早期発見につなげたい」(園田社長)という。
日本政府は現在、診療の質を確保する目的で、オンライン診療のガイドラインを設置。システムの使用状況や設定変更などのログを残すことを事業者に課しているが、クラウド活用はこれに対応する狙いもあるという。
技術開発室 室長の島本大輔氏によると、同社はAWSの運用タスクを自動化するツール「AWS Systems Manager」と監視ツール「Amazon CloudWatch」を組み合わせて利用。「どのエンジニアが、何時何分何秒にどんなコマンドを実行したか」といった履歴を自動で取得可能にし、ガイドラインに対応しているという。
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