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インタビュー
» 2019年07月05日 05時00分 公開

「この虫の名は?」すぐ解決 20万匹の害虫画像を学習した、駆除を支える「クラウド×AI」がスゴい (1/3)

大阪に拠点を置く、害虫駆除機器の専門商社「環境機器」が、害虫の画像を自動で取得し、名前を判定するサービス「Pest Vision」を開発。画像は、Amazon Web Services上に構築したAIを使って分析している。環境機器の担当者に、その仕組みと精度について聞いた。

[濱口翔太郎,ITmedia]

 「ショウジョウバエが5匹、ユスリカが30匹」──。害虫駆除業者は、害虫の発生経路などを突き止めるため、虫を捕まえて目視で数える作業を日々行っている。この負担を軽減するため、AI・IoT・クラウドの技術を駆使し、害虫の撮影や分類を自動で行うシステムを、害虫駆除用品の専門商社が外部ベンダーと協力して開発。2018年から提供している。分類の精度は職人を超えるという。

 「害虫をカメラで撮影し、画像をクラウド上のストレージに転送した上で、AIで解析する仕組みです。AIは約20万匹の害虫の画像と名前を教師データとして学習しているため、約95%の精度で名前を判別できます」

 そう話すのは、害虫モニタリングシステム「Pest Vision」を企画した、専門商社「環境機器」経営企画部 副部長の亀本達也さんだ。同社は害虫駆除用品の卸売業界の最大手で、年間売上高は約32億円(2017年12月期時点)と市場の約4割を占める。競合との差別化をさらに進めつつ、駆除業者の働き方を改善するためにPest Visionを生み出したという。

photo 害虫モニタリングシステム「Pest Vision」の仕組み(出典:環境機器 公式サイト)

 「駆除業者は、害虫が発生した企業から『害虫の名前と対策を教えてほしい』といった依頼を請け負っています。ですが、トラップを仕掛けて害虫を捕まえ、その正体を突き止める作業は古くから人力で行われてきました。職人の目視と手作業に頼っており、再現性がなかった他、人手不足が課題になっていました。ITを活用し、これを解消したいと考えました」(亀本さん)

虫を目視で分類、数取器でカウント 報告書は紙

 これまでの駆除業者の働き方は、具体的にどのようなものだったのか。

 亀本さんによると、企業から依頼を受けた駆除業者は通常、環境機器などの商社から「ライトトラップ」などの機器を仕入れ、害虫の発生現場に設置する。青色の光に誘われて飛んできた虫を板に衝突させ、捕虫シートなどに粘着させて捕まえる仕掛けで、シートは1週間〜1カ月に1回のペースで交換する。

 駆除業者の職人は、交換したシートにくっついた虫を目視で確認し、「ショウジョウバエが5匹、ユスリカが30匹……」と手作業で集計。結果を踏まえ、依頼主に「小さな虫が多いので、窓やドアのガラスを2重にすべきです」「害虫が昨年から10%増えているので、消毒回数を増やしましょう」などと対策を伝えている。環境機器がコンサルティングを引き受け、対策の立案をサポートする場合もある。

photo ライトトラップの一例

 ただ、小さな虫を顕微鏡やルーペで拡大しながら分類し、交通量調査などで使う「数取器」でカチカチと数え上げる作業は、プロの職人といえども時間がかかる。何度も現場に足を運んでシートを交換する作業や、紙の報告書を作成し、依頼主に提出する作業も負担になっている。特に害虫が多い夏場は、依頼が殺到して仕事量がさらに増してしまう。

 職人は労働時間の約半分をこうした分類作業に割いており、肝心の害虫駆除に手が回っていないとの試算もあるという。

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