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» 2019年07月19日 07時30分 公開

ビジネスとブロックチェーンの関係 AWSジャパンに聞く(2/3 ページ)

[山崎潤一郎,ITmedia]

 「既にPoC(Proof of Concept)の段階を通り過ぎ、実ビジネスの中でどのような形でブロックチェーンの技術を活用するべきかという相談が増加している」と現状を教えてくれたのは、アマゾン ウェブ サービス ジャパン技術統括本部/レディネス&テックソリューション本部/本部長/プリンシパルソリューションアーキテクトの瀧澤与一氏。多くの企業でバズワードの段階は通り越し、実装に向けた動きが活発化しているということだ。

photo アマゾン ウェブ サービス ジャパン技術統括本部/レディネス&テックソリューション本部/本部長/プリンシパルソリューションアーキテクトの瀧澤与一氏(左)と同スタートアップソリューション部シニアソリューションアーキテクトの塚田朗弘氏(右)

 AWSでは、ブロックチェーンに関し、次の3つの関連サービスを提供しており、これらのサービスからユーザーの要件に最適なものを選択し、システムを構築することになる。それぞれが異なる役割を提供しているというのではなく、最適解を提供すべく、3つの選択肢があるというイメージだ。

(1)Amazon Managed Blockchain:スケーラブルなブロックチェーンネットワークを簡単に作成し管理することができるフルマネージドのサービス

(2)Amazon Quantum Ledger Database (QLDB):改ざん耐性を備え暗号的に検証可能な履歴を提供するフルマネージド型台帳データベース

(3)AWS Blockchain Template:ブロックチェーンフレームワークを迅速に構築可能なテンプレート

 AWSに寄せられるブロックチェーン関連の相談は、「うちのシステムにも低コストで高機能なブロックチェーンの仕組みを生かせるのでは?」といった一般的なものから、「スケーラブルなブロックチェーンネットワークの構築や管理運営が難しいのでなんとかならないか」といった実践的なものまで千差万別だという。

 中には「ブロックチェーンが流行っているので検討したい」といった本末転倒気味の要望もあるという。ブロックチェーンに対する過度な期待が先行するあまり、目的と手段が入れ替わってしまっている例だ。そのような要望に対しても、「課題を整理した上で、分散技術のブロックチェーンがいいのか、従来型の中央集権的な構造のQLDB(上記2番)が適しているのかを検討し提案する」(瀧澤氏)という(下図)。

photo 改ざん耐性を備えた台帳管理専用データベースAmazon QLDBを中央集権的に構築する手法(左)とAmazon Managed Blockchainで分散型の台帳を構築する手法を要件により使い分ける

 ここで、1つの疑問が浮かぶ。ブロックチェーンを日本語では「分散台帳技術」と表現されることもあるように、参加する複数のステイクホルダー(企業や組織)がそれぞれのノード(コンピューター)で全体的な台帳を分散共有する仕組みをブロックチェーンと称するのではないのか。上図左のAmazon QLDBのように中央集権型のシステムのこともブロックチェーンとして分類可能なのだろうか。

 「QLDBは、改ざん耐性を備えた台帳管理専用データベースという意味で関連サービスとして提供している。業務の形態によっては、分散型のブロックチェーンにこだわる必要はなく、高速処理、不変性といった特徴を備えたQLDBを中央集権型のまま導入する方が向いている場合もある」(アマゾン ウェブ サービス ジャパン技術統括本部スタートアップソリューション部シニアソリューションアーキテクトの塚田朗弘氏)という。何でもかんでも、流行(はや)りに乗じるのではなく、あくまでも課題解決に最適な方法論を提案するという方針なのだ。

 その一方で、「現実世界のビジネスモデルが分散型であれば、ブロックチェーンが適している可能性がある」(塚田氏)と追補する。たとえば、食品のサプライチェーンなどがそうだ。食品の場合、商品が生産者から消費者の手に渡る間に、複数の企業や団体が関わる。サプライチェーンに多くのステイクホルダーが関与するという意味で分散型のビジネスモデルが形成されている。

 サプライチェーン上で商品に関与する組織が多岐に渡れば、商品の情報を一貫して管理することは難しくなる。中間業者の中には、情報を紙ベースで管理しているようなところもあるかもしれない。不道徳な企業の中には、産地や期限の情報を改ざんする場合もあるだろう。

 実際に、食材の産地や消費期限の偽装が社会問題化することは珍しくない。ブロックチェーンで情報を管理すれば、改ざんが不可能になる。改ざん問題だけではない。流通をブロックチェーン上で一貫して管理できれば、納期の最適化が実現し、「3分の1ルール」に代表される食品ロスの問題も改善できるのではないのか。

 ただ、食品のサプライチェーンに限ったことではないのだが、ブロックチェーンをビジネスシーンに導入するには、法整備や業界慣習といった、技術面以外での乗り越えなければならないハードルが山積しているのではないか。

 例えば、前述の総務省のワーキング・グループでは、ブロックチェーンのユースケースとして、法人設立手続きのオンライン化が盛り込まれている。先の国会で成立した通称「デジタル手続法」では、当初、法人設立時、押印の義務化を廃止するプランが盛り込まれていたのだが、印鑑関連の業界団体の猛反発を前にこの項目は見送られてしまった。

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