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» 2019年08月08日 07時00分 公開

伊豆諸島航海日誌(1):あのとき、「ネットが消えた島」で何が起きたのか (2/4)

[長浜和也,ITmedia]

新島村でくすぶる不満の理由

 神津島や式根島の観光協会のTwitter公式アカウントが「これは通信災害だ」と発言していたように、民宿をはじめとする観光業などに大きな影響があった。金融機関のATMが軒並み使えず、レジのクレジットカード機能も利用できない状態に。「クレジットカードが使えず、現金も引き出せない!」という観光客の悲鳴も聞こえた。

 ところで、ネットが使えない中で人々はどのような暮らしをしていたのだろうか。筆者は7月下旬に島へ渡り、生活者視点で「ネットが消えた島」の記憶を集めてみた。

 島内居住者の声を紹介する前に、通信障害が発生した4島の特殊事情を説明しておく必要がある。この事情も、今回の障害によるダメージ(特に心情的な部分)に大きく影響している。

 光回線を導入する以前、大島、三宅島、八丈島(大島から真南に並ぶ島々)は、三浦半島と伊豆半島から敷設した海底光ケーブルでブロードバンド回線を利用できた。しかし、利島、新島、式根島、神津島(大島から南西に並ぶ島々)、御蔵島(三宅島から南東に離れた島)は洋上接続のマイクロ波無線と島内敷設のADSLを利用していた。

 ADSLのデータ転送速度は、新島住民の証言によると「Webページを開くのに数十分かかる」ほどの遅さだった。新島村(新島と式根島を含む)の住民アンケートでも「回線が遅い」「接続が安定しない」という不満が多く上がっている。加えて、新島村住民には「伊豆諸島の中で、新島の光回線が一番後回しにされた」という不満が、この4〜5年の間くすぶっていたという。

新島、式根島、神津島、御蔵島に導入する以前の伊豆諸島における光回線敷設状況(出典:新島村)

 東京都とNTT東の協力で、そんな4島でようやく海底光ケーブルの敷設が始まった。この敷設計画では、大島から利島、新島、式根島、神津島、御蔵島、三宅島を結ぶケーブルを新たに敷設。既にある大島と三宅島を結ぶケーブルと接続するループ状回線を目指し、三宅島と御蔵島を結ぶケーブルを敷設した後、御蔵島から神津島、式根島、新島へと南から北に向かって作業を進めた。大島からも利島、新島と北から南に向かって作業を進めており、住民などに提示したスケジュールでは2018年度に完成する予定になっていた。

 新島村でも17年までに、島内の幹線光ケーブルと、整備区域内事業者建物と個人宅までの引き込み線の整備工事を終え、17年9月から光回線契約と宅内工事の説明会を開いている。

 18年6月の光回線運用開始とともに急速に契約数が伸び、多くの事業所と個人宅がADSLから光回線に移行した(一部はADSLのままか、光回線を契約してもADSLを残していた)。携帯電話については、光回線に接続したauとソフトバンクがLTEサービスを開始し、通信速度が向上した。NTTドコモは既存の音声通話回線と3Gデータ通信を継続している。

2017年度中の光回線契約ならば光コンセントまで村が工事費を負担してくれた

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