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» 2019年08月08日 07時00分 公開

伊豆諸島航海日誌(1):あのとき、「ネットが消えた島」で何が起きたのか (3/4)

[長浜和也,ITmedia]

「ないならないで、しょうがない」(by 中2男子)

 上記の状況を踏まえた上で、筆者が7月22日から24日にかけて新島で取材した住民の声を紹介しよう。「4月末から5月初めのインターネットが使えなかったときのことを話してもらえますか」という質問に答えてくれた人の声を集めている。完全にアポなし仕込みなしの「○○の家族に乾杯」メソッドだ。

 上は80歳代から下は中学2年生まで、幅広い世代に話を聞けた。日常生活でインターネットを利用しているのは、やはり50歳代から下になる。

新島港近くで海の家を営んでいる「Bagus」オーナーはADSL残留組。「特にいつもと変わらなかった」そうだが、実家の神社(実は新島に古くから続く神主の一族)は光回線に移行していたので大変だったらしい

 思いっきりネットを使っていそうな中学生3人にも話を聞けた。いずれもスマートフォンで利用するのは「ゲーム、LINE、YouTube」。「ゲームにはまっている子は、できなくなって死んでいました」(女子)、「ゲームができなくなったときは、何か、うああああぁああぁぁ! って感じだった」(男子)というリアルな声が聞けた。

 興味深いのは全員「寝る時間が早くなった」と答えたこと。ネットを使えないとやることがないので、夜更かししなくなったという。おかげで体調も「何か、よっしゃって感じで」(男子)とすこぶるよろしかったそうな。

 寝る時間が早まったのは中学生だけではなかった。間々下温泉で出会ったリハビリ専門職の40代男性は、「移住して2年半。ネットが使えないと酒飲んで寝るしかないんですよね。寝る時間がめちゃくちゃ早くなったなあ」と湯船の中で話してくれた。

 新島とNTT東は、各集落の集会所などに非常用の電話回線とADSLの無線LANアクセスポイントを用意したり、個別にADSLの再導入(ただしこの場合、光回線との二重払い)に対応したりしている。しかし、利用が集中すると「めっちゃくちゃ重くてゲームはできないし、動画は荒いし、メッセージもなかなか送れないし」(男子)で正直使えなかったらしい。

 中学生に「LINEが使えなかったとき、どうしていました」と尋ねると、「みんなで若郷会館(旧若郷小学校。今は集会所兼児童館)に集まって、いつもLINEで話しているようなことを話しました」(女子)と教えてくれた。別に「ネット越しより直接会って話のが大事だよね」と思う大人(筆者)に合わせたわけではなく、そうするしかないですよね、という感じ。

 「ゲームができなくて、うあああああぁああぁぁ!」の男子も、船に乗って釣りをしたり、友だちと外で野球をしたりして連休を過ごしたという。「ネットがなければないで、何とかなるっていうのが分かった」(男子)

 しかし、筆者は疑問に思った。若郷会館などに集合するときの連絡はどうしたのだろう、と。

 先述したように、今回の通信障害でauとソフトバンクのLTE対応スマートフォンは通話もできなくなった。LINEは使えず、固定電話やFAXもだめ。

 「あ、実は家の電話(固定電話)は、まだ光にしていなかったんです。友だちにもう一人、同じ子がいて、2人で時間を決めてそれぞれ近所の友だちを(直接家にいって)誘って集まりました」(女子)

 それ、おじさん(50代半ば)が子供のころ(いまから40年前の世界)と同じだよ……そんなことを思いながら、話を聞いていた。

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