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あのとき、「ネットが消えた島」で何が起きたのか伊豆諸島航海日誌(1)(4/4 ページ)

» 2019年08月08日 07時00分 公開
[長浜和也ITmedia]
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人々は式根島に向かってスマートフォンを掲げた

 通信障害は大型連休の時期に起きたため、多くの観光客が来島していた。ただ、ほとんどの来島者が利用する東海汽船がしっかり告知してくれたので、観光客はネットや電話が使えないことを「ネタ」として楽しんでいたらしい(民宿経営者談)。中には仕事の連絡ができないことを心配する観光客もいたそうだ。

 そんな中、回線数に制約があるものの、25日には式根島でソフトバンクとauのLTEサービスが回復。どうしても携帯電話を使いたい人は、式根島から送出する電波を捕まえるため、1日に数度、新島・南西側海岸のできるだけ高いところに立ち、式根島に向かってスマートフォンを掲げたという。

画面奥に見えるのは式根島。左に見えるのは新島南西岸の高台にある温泉施設「湯の浜露天温泉」で、通信災害当時、島の住民も観光客も式根島のLTE電波を捉えるためにこの辺りに並んで式根島に向かってスマートフォンを掲げたという

スニーカーネットで支えた観光協会

 テレビなどでも大きく報じられたように、光回線を使っていた民宿などは、予約者との電話確認ができずキャンセルが続出した。一方で、新島観光協会のようにADSLのまま(もしくはADSLを残していた)だった事業者は、問題なく電話やFAXを利用できた。

 そんな観光協会は、観光客と民宿の橋渡し役として活躍。予約した民宿に電話がかからず不安になった利用者は、観光協会に電話やFAXをしたという。観光協会のスタッフが、FAX用紙を民宿に持って行ったり、口頭で内容を伝えたりと、“スニーカーネット”で支援する状態だった。

通信障害の間、電話やFAXの代行で観光業を支えた新島観光協会

 島にある民宿全体での予約キャンセルもかなりの数に上るという。他にも、ネットワークを使った発注システムやATMが使えなくなるなど、かき入れ時だった観光業は大きな打撃を受けた。

 次回は、新島村商工会に「アポあり、取材依頼あり」で聞いた「商売への影響」について紹介する。

(つづく)

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