総務省は8月8日、「インターネット上の海賊版サイトへのアクセス抑止方策に関する検討会」の報告書を公開した。対策案の1つ「アクセス警告方式」について、全てのユーザーから事前に同意を得ることが難しく、インターネットサービスプロバイダー(ISP)にとって技術的・コスト的な課題があるため、適用が困難だと指摘。一方、フィルタリングサービスやセキュリティ対策ソフトの導入など、ユーザーの端末側での対策は「即時性が高い」との見解を示した。
アクセス警告方式は、ISPがユーザーの通信をチェックし、海賊版サイトへのアクセスを検知した場合、Webブラウザに「本当に海賊版サイトにアクセスしますか?(はい/いいえ)」といった警告画面を表示させる仕組み。総務省が5月に約2000人を対象に実施したアンケート調査によると、9割以上が「警告画面が表示されたらアクセスを思いとどまる」と回答した。
ただ、ISPがユーザーの通信内容を同意なくチェックすることは、憲法第21条と電気通信事業法が定める「通信の秘密」に違反する恐れがある。回避するには、事前にユーザーから同意を得ておく必要があるが、同省のアンケート調査では、「一定の場合は許容できる」「全く気にならない」などと、同意に前向きな回答をした人は5割に満たなかった。
そのため報告書では、ISPが通信内容を確認する目的で全契約者の約款を変更し、「あやしいサイトにアクセスした場合は、通信の遮断を許可する」といった条項に同意させることは、反対意見が出るため困難だと指摘している。
一方、ISPがユーザーに対して個別に連絡し、同意を得た人だけにアクセス警告方式を実施することは、理論上は可能という。
ただし実際は、アクセス警告方式の仕組みによっては、ISPが高価な専用機器を導入する必要があったり、本来遮断すべきではない通信を止めてしまう恐れがあったりする。海賊版サイトがHTTPS(SSLによる暗号化通信)に対応している場合は、警告画面の表示が極めて難しい課題もある。
一連のコスト的・技術的な課題を踏まえ、報告書では「ネットワーク側(アクセス警告方式)ではなく、端末側で対策を実装することが、より(効果の)即時性が高いと考えられる」と説明している。
「通信の秘密」を侵害することなく実施できる対策の具体例は、青少年がアクセスできるWebサイトの閲覧を制限する「フィルタリング」や、セキュリティ上危険と判断されるWebサイトへのアクセスを防ぐソフトの活用などがあるという。
報告書では、こうした端末側で実施できるサービスの普及を図るとともに、運営元のセキュリティ事業者などに海賊版サイトのリストを提供するなど、関係各所と連携することが望ましいと結論付けている。
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