AWS障害、“マルチAZ”なら大丈夫だったのか? インフラエンジニアたちはどう捉えたか、生の声で分かった「実情」(3/3 ページ)
同社が障害明けの26日に行った、エンジニアチームによる障害の振り返り会議に記者も同席した。「障害発生当初、いろいろなジョブに影響が出たため何が起きているのか分からなかった」「各サービスを管理するAWSマネジメントコンソールの動きもおかしく、問題に対応しようとしても何度もリトライしないとインスタンスが立ち上がらなかった」「AWS CLI(コマンドによる管理ツール)は比較的調子が良かった」──など、現場の生々しい声が飛び交った。
一方、「『AWS Fargate』で運用しているサービスは自動復旧できた」という報告も上がった。Fargateはサーバなどの管理をAWS側に任せてコンテナを実行できる、いわゆる「サーバレス」のサービスだ。
会議では、「バッチ処理サーバをコンテナ化するのが、今後の対応策の一つだろう」という意見でまとまった。コンテナ化してFargateで運用すればAWS側が可用性を自動管理するメリットがあり、Fargateを利用しないとしても、コンテナであればサービスの立ち上げや終了が容易だからだ。
「動いているサービス」を改修することの難しさ
VOYAGE GROUPのエンジニアの一人は、バッチ処理サーバの設計について「古いことは分かっていたが、『動いているサービス』の改修の優先度を上げるのが難しかった」と明かす。
「新規に開発するサービスであれば、新しい技術を取り入れて設計していけるが、過去に設計してそのまま動作しているものについて緊急時を想定し再設計することに十分にリソースを割けるかというと、なかなか難しい面もある」(同)
同社の別のエンジニアは、「そういう意味では、障害が起きて原因が詳細に報告される今回のような例は貴重。対応すべきことが明確になる」と、AWSの障害報告を評価していた。
そのサービスはどこまでリスクを許容できるのか
各社・各エンジニアから聞いたことをまとめると、AWSに再び障害が起きた場合に、影響を最小限に抑えるための対応策としては、
- 3AZでのマルチAZ構成にする
- コンテナ化などでサービスを落としやすく立ち上げやすい環境にする
- 可能ならFargateを使う(サーバレス化)
- 「AWS Step Functions」で処理ステップを構成しビジュアライズする(処理の見通しが容易になる)
といった方策が考えられるという。
聞いていて感じたのは、エンジニアの人々は「落ちない設計」より「落ちにくい・落ちても迅速に復旧できる設計」を目指しているということだ。
ロードバランサーの障害に対応していたエンジニアA氏は、「結局はどこまでリスクを許容するかではないか。大規模災害など、東京リージョンの全てのAZが壊滅することを想定すればマルチリージョンや他社クラウドとの併用も考えられるが、自社のサービスは果たしてそこまでの継続性を必要とし、運用コストを払えるものなのか」と指摘する。
今回の障害で、クラウドへの漠然とした不安から「オンプレミスへの回帰はどうか」という声もネット上にあった。しかし、ふたを開けてみれば5時間程度で大部分が復旧しており、オンプレミスで同様の障害があったときに同等の速度・労力で復旧できるかには疑問符が付く。
AWSを利用する企業にとって、今回の障害は「どのようなサービス運用が適切なのか」を社内で議論する機会になりそうだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
本日の新着記事
アクセスランキング
-
1
プールにはおしっこが何リットル混じっている? 人工甘味料を基に計測 カナダチームが2017年に調査
-
2
東京23区で「徒歩10分以内」に駅がない地域はどこ? 駅空白地帯マップが話題
-
3
新「マイナアプリ」登場、旧「マイナポータルアプリ」との違いは 一通り触ってみた
-
4
「まるでキャバクラ」――「ライザのアトリエ」主人公と話せるAIアプリに「課金圧強すぎ」の声 「10日に会話15回」で月額980円
-
5
新「マイナアプリ」きょうスタート 「デジタル認証アプリ」統合、水色→ピンクに
-
6
ボカコレ炎上、MVに「3DS」使った曲“ランキング除外”で 「基準あいまい」とクリエイター反発
-
7
「うるう秒」27年に事実上廃止へ 自転とのずれ「1時間」まで容認 10月に国際会議で採決
-
8
「まるで奇行種」――とある人型ロボの爆走フォームが話題に 中国のロボット運動会400m走で優勝
-
9
農水省の“クソダサ”ポスター話題 「AIよりよっぽど良い」の声も 担当者に狙いを聞いた
-
10
FANZA、成人向けAI創作・公開サービス「FANZAスタジオ」発表 先行体験は8月24日から
ITmedia NEWS SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaNEWSをフォロー
あなたにおすすめの記事PR