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» 2019年09月03日 12時04分 公開

市販プロジェクターで“非破壊検査”、宇宙線でピラミッドを「透視」──イノベーション・ジャパン2019で見た注目技術 (1/2)

大学やベンチャー企業のテクノロジー見本市「イノベーション・ジャパン2019」で展示されていた技術を紹介していく。

[林佑樹,ITmedia]

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と科学技術振興機構(JST)が主催する、大学やベンチャー企業のテクノロジー見本市「イノベーション・ジャパン2019」(東京ビッグサイト)が8月29〜30日に行われた。

 イノベーション・ジャパン2019では、先端技術からライフスタイルまで幅広いジャンルにおける、500以上の研究成果が展示された。中でも筆者が注目した技術を紹介していく。

市販プロジェクターで非破壊検査!?

 「市販のプロジェクターと焦点距離200mmほどのカメラがあれば非破壊検査ができる」──こんな技術を展示しているのは、奈良先端科学技術大学院大学の向川康博教授の研究室だ。

左下がプロジェクターの光源で、基板下に見える黄色い三角形のシールが貼られたものがカメラ

 一般的に、調べたい物体の内部を壊さずに検査する方法としてはX線スキャンやレントゲン撮影が挙げられる。しかし専用の機材や取り扱い資格が必要になることから、導入コストは安くない。

 向川研究室が提案するシステムは、市販の比較的安価な機材で収まる上、資格も必要としないのがメリットだ。

 会場のデモでは比較的高価なプロジェクターを使用していたが、モバイルプロジェクターでも可能だという。

 仕組みは、投影された正弦波パターンの解析がキモだという。

 まず調べたい物体に対し、プロジェクターから正弦波のパターンを投影する。これをカメラで撮影し、写った周波数を解析する。

 プロジェクターから投影された正弦波パターンは投影距離に応じて広がるため、これをプロジェクターとは違う画角のカメラで撮影すると、周波数の解析から、特定の奥行きの信号のみを抽出することができる。

半透明シートごとに文字がプリントされており、奥に行くほど視認しにくい

 デモでは、10ミリ間隔で設置された4層の透明なシートにそれぞれA〜Dの文字を印字。何も解析をしなければA〜Dの全ての文字が写真に写ってしまうが、周波数の解析により「B」の文字のみを抜き出している様子を確認できた。

同システムで撮影されたもの。1枚目のシートよりも奥にある文字がくっきりと見えている

 金属など光をほぼ透過しない物体には不向きだが、人の肌や飲食物などある程度光が奥まで届く物体に向いているという。例えば、皮膚下の水分分布や、果物などへの異物混入の有無を簡易的に知る手段として期待できるとしている。

 現在は精度を高めている段階。人の肌は約1〜2センチまで、果物は全域の内部撮影を目指すという。

ピラミッドやマヤ遺跡、ダム、富士山を「透視」

 2017年に、エジプト・クフ王のピラミッドに未知の巨大空間があることが新たに分かった。これは名古屋大学の森嶋邦博特任助教が中心となって進めている「宇宙線ラジオグラフィー」という非破壊的な空間探査システムによる成果だ。

 ピラミッドのような巨大な構造物の内部を見ることができる宇宙線ラジオグラフィーとはどんな技術だろうか。

解説パネル

 人の目には見えないが、「ニュートリノ」や「ミューオン」といった宇宙由来の微粒子が日常的に地上へ多く降り注いでいる。

 宇宙線ラジオグラフィーではミューオンに注目。数キロ単位で物体を透過するというミューオンの性質を利用して、巨大構造物を透過したミューオンの量を専用のフィルム(原子核乾板)で計測する。

 透過した経路が石材ばかりであれば、途中でミューオンが石材にぶつかるため、観測できるミューオンの量は減る。一方、途中に空間があれば観測量は増える。内部を見る仕組みとしては、レントゲン撮影と同じだ。

原子核乾板。サイズはA4サイズほどだ
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