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» 2019年09月03日 12時04分 公開

市販プロジェクターで“非破壊検査”、宇宙線でピラミッドを「透視」──イノベーション・ジャパン2019で見た注目技術(2/2 ページ)

[林佑樹,ITmedia]
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 ミューオンを計測する原子核乾板は、電荷を持った粒子を写す特殊なフィルムだ。かつては素粒子研究の場で活躍するアナログ検出器として利用されていたが、デジタル化の波で生産メーカーが撤退。名古屋大学は現在、自前で原子核乾板の製造を行っている。

 アナログフィルムなので、デジタルの検出器のように電源を必要としない。狭い空間や水中など、設置場所を選ばないのが魅力だ。同じ場所に何枚も設置することで、分解能を得るという。

 クフ王のピラミッドの他に、マヤ遺跡の計測も終えている。現在解析中で、早ければ年内に発表があるかもしれないという。遺跡調査だけでなく、ダムや火山、インフラ設備の内部調査も可能で、15年には福島第一原発2号機の炉内状況の可視化に成功した。今後、遺跡調査やインフラ診断など多分野へ応用を進めていきたいとしている。

布がデジタルサイネージに? 東大発ベンチャーのフレキシブルディスプレイ

 A3用紙大の曲がるシートに、電光掲示板のような流れる文字を表示しているのは、東京大学発のベンチャー企業、パイクリスタルだ。

映像を表示しつつ、曲げている様子。サムネイルのまま再生すると雰囲気が分かるだろう。柱に巻いたり、上記写真ほどは曲げられるそうだ

 同社が展示しているのは有機半導体(半導体の性質を示す有機物質)を利用したフレキシブルディスプレイ。半導体の性質を応用する上で重要となる、「単結晶薄膜」を大きな面積に対し作製する技術により実現したとしており、紙や布などにも実装できるのがポイントだ。光るのは従来のLEDで、LEDや電源をつなぐ回路に有機半導体の技術が利用されている。

 従来のサイネージで用いられるディスプレイに対し、安く・軽く・大きいことがメリットだという。「数十トン程度の大型デジタルサイネージと同じサイズで、有機半導体フレキシブルディスプレイなら数百キロで済ませられる」(同社)

 軽く、柔軟性もあることから、ビルや橋、バスなどの表面をディスプレイ化することもできるとしており、既存のサイネージの置き換えや新たな場所での用途を想定している。

 今後はデジタルサイネージ市場でテストを行ない、2〜3年内の製品化を目指すという。

実機。LEDは3ミリピッチとなっている。より画素数を高めることも可能だが、重量が増して柔らかい材料に実装できなくなるため、その方向は考えていないという
駆動しているところ。近距離のため、低画素であることが分かるが、これが50×50メートルの大きさになり、かつ遠くから見るのであれば解像度としては十分だ

2.4GHz帯を使ったワイヤレス給電

 立命館大学のマイクロパワーシステム研究室は、Wi-FiやBluetoothでおなじみの2.4GHz帯の電磁波を利用したワイヤレス給電を展示していた。

 ワイヤレス給電技術は「Qi」が身近だが、送電距離は極めて短い。送電距離を伸ばそうとすると大掛かりな設備が必要となるほか、人体への影響を回避していくと、東京大学の「マルチモード準静空洞共振器」のように、部屋ごとワイヤレス給電に対応させる必要がある。

 しかし、LED数基を点灯させるくらいの送電であれば、電磁波を利用できるのではないか──。そういった視点で生まれた研究だという。

缶テナ缶テナ 電波法などの関係でデモは映像のみだったが、30センチほど離れた場所の受電機への送電を確認できた。なぜ「缶テナ」がビール缶であるのかは、笑顔のみの回答を得られた

 デモでは「缶テナ」と名付けられた水平/垂直偏波切り替え可能なアンテナが用意され、その先にLEDや受電機を搭載したつけまつげやネイルがあった。

 缶テナを水平アンテナとして使用した場合は、水平の電磁波強度が高くなり、垂直の電磁波強度が低くなる。垂直アンテナにした場合はその逆となり、水平と垂直を切り替えることで複数の受電機に対応する。また送電量の変更も可能だという。

受電機の小型化のしやすさも魅力(つけまつげに搭載している)

 想定している用途は、ウェラブル型バイタルセンサーなどの超低消費電力機器や、内部から光るアクセサリーなどへの給電の他、ファッションショーやコンサートの演出への応用も考えられるという。

 ただ、現状として2.4GHz帯には多くの電波が飛び交っており、それらを利用する機器との干渉や影響の回避については、今後の課題としている。

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