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データサイエンティストが今すぐ「アルキメデスの大戦」を見るべき理由マスクド・アナライズのAIベンチャー場外乱闘!(3/5 ページ)

» 2019年09月04日 07時00分 公開

組織における協力者の重要性

 人間が関わる組織である以上、どうしても人間関係による問題は起こります。

 主人公は正確な建造費を算出するために、搭載する装備の価格や建造にかかる人件費を調べる必要に迫られました。海軍ではこれらの金額を参照できないため、民間の造船業者に依頼しますが、軍事機密を理由に断られ続けます。それでも主人公が懇意にしていた財閥令嬢による紹介と説得により、軍備拡張に反対して出入り禁止となった業者の協力を何とか取り付けたのです。

 前述した戦艦への乗艦も、実は艦長と直属の上司が懇意だったおかげで実現しています。最初は軍人としての常識に欠ける主人公に反発した部下も、こうした泥臭さのある立ち振る舞いに影響されて、積極的に手を貸すようになりました。

 現代でも軍と企業という違いはあれど、人間が集まればどこかに協力者はいるものです。以前からデータ分析をやりたかった人、学生時代に統計や数学を勉強していた人、独学でプログラミングを学ぶ人など、社内有志によるチームの立ち上げも可能でしょう。また、部門間の橋渡しになってくれる人や、知見や知識を共有してくれる人など、社内外を問わず人脈を探ってみましょう。

 しかし、目的が同じというだけで協力してくれるとは限りません。そこで重要になってくるのがお互いをリスペクトする気持ちです。

業務知識によるお互いのリスペクト

 主人公は数学の天才ですが、造船に関しては素人でした。そこで付け焼き刃ながら、海軍という環境を利用して、造船技術を貪欲に学びます。造船に精通する技術者という側面があれば、外部の造船業者から見ても「取引先」ではなく、同じ「技術者」という立場になります。対等になればこそ、同じ目的に向かって協力する意欲が出てくるわけです。これが発注者である海軍少佐という権力だけでは、人は動かないでしょう。

 データサイエンティストは数学や統計の知識が求められますが、同じように業務知識も重視されます。業界における仕組みや方法論を把握した上でデータを分析しなければ、机上の空論止まりでビジネスに活用することができません。自身の専門分野だけでなく、業務に関連する分野の学習も重要です。

 そして的はずれな分析結果しか出せなければ、信頼も得られません。だからこそ現場をよく知る担当者の協力や理解が必要になってきます。原作漫画もこうした描写に力を入れており、映画「風立ちぬ」のモデルになった航空機設計者の堀越二郎氏とも技術論をぶつける描写があります。

 こうして必要なデータを集めた主人公は、戦艦の建造費用の算出に取り組みます。データをそろえて試行錯誤しながら分析するのは現代のデータサイエンティストと同じです。現在であればコンピュータや分析ツールもあるので、天才数学者でなくとも分析できるという点は時代の進化を感じます。

 このように海軍の天才数学者の活躍は、現在の企業で働くデータサイエンティストにも通じるものがあります。最後にデータを分析する前段階として、もっと俯瞰的(ふかんてき)な視点でアルキメデスの大戦と企業のデータサイエンティストについて考えてみましょう。

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