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データサイエンティストが今すぐ「アルキメデスの大戦」を見るべき理由マスクド・アナライズのAIベンチャー場外乱闘!(4/5 ページ)

» 2019年09月04日 07時00分 公開

目的と目標のすれ違い

 前述の通り日本海軍では、「戦艦派」と「空母派」で意見が割れていました。戦艦派は「大きな主砲を積んだ戦艦があれば戦争に勝てる」「日露戦争は戦艦が強かったから勝てた」「航空機は役立たず」「海軍の伝統にそぐわない」と主張します。

 さらに「日本の象徴となる戦艦を建造して威信を示す」「最大最強の戦艦は、乗員にとって心の盾になる」と、組織の体面や感情に訴えかけて、論点をすり替えようとします。本編終盤で建造費の不正を強引に押し通す手段が発覚しても、「諸外国に察知されるのであえて金額を捏造(ねつぞう)した」「敵を欺くにはまず味方から」と正当性を訴えます。

 また、原作漫画では戦艦の建造だけでなく、軍需工場の拡張による公共事業としての役割を果たすことも論拠とします。

 ここで、あらためて軍の目的について考え直してみましょう。迎えるべき結末は戦争に勝つことです。そして戦争で勝つだけでなく、抑止力で戦争を回避することも重要です。

 世界最強の戦艦を建造することで、戦争の勝利や回避につながったでしょうか。現実には戦争が起こり、空母派の主張通りに戦争の主役は戦艦から航空機に移り変わりました。戦艦の建造という目標を達成しても、戦争の勝利と回避という目的は達成できませんでした。

 現代の会社でも、経営層が無謀な目的を掲げ、各部署で設定された目標を従業員たちが何とか実現しようとする場面は往々にしてあります。

 例えば、直近で強引な売上目標を設定させられたとしましょう。これを何とか達成したいと思い、短期的に強引な手法を用いて目標を達成しても、それを積み重ねていくと将来の信頼失墜につながります。大事なことを隠して根本的な問題解決を先送りにし、後に偽装が発覚して窮地を迎える企業は後を絶ちません。

目的と目標

 原作漫画でもこの問題を掘り下げており、主人公が目的達成のために何をすべきかを俯瞰して捉えて行動し、その結果として軍内部での影響力を強めていきます。ストーリーが進むと、戦闘機の開発計画が立ち上がり、速度や旋回性能といった機動性だけでなく乗員の安全性も重視するようになります。また日本が技術開発で遅れている現状を認識し、ドイツから研究段階の技術指導を受けるシーンなどもあります。

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