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データサイエンティストが今すぐ「アルキメデスの大戦」を見るべき理由マスクド・アナライズのAIベンチャー場外乱闘!(2/5 ページ)

» 2019年09月04日 07時00分 公開

組織に合わせた権限を与える

 海軍に入った主人公は、すぐに少佐の階級を与えられます。少佐の階級は艦長の補佐役で、会社の役職では部長(よりちょっと下)ぐらいの立場です。少なくとも学生がすぐになれるものではありません。

 主人公を少佐に任命した上官は「軍隊という純然たる階級組織では、少佐でなければ上層部は意見に耳を貸さず、部下は動かない」と説明します。さらに主人公に部下と個室を与え、戦艦の建造費算出に集中できる環境を提供します。目的達成のために、例外ながらも必要な権限を与えたのです。

 現代の企業でも、役職や部門による力関係が影響しますし、社内外で横断的に作業する立場の人には、ある程度の役職や権限が必要です。中途で入社した平社員データサイエンティストに指図されても、誰も言うことを聞かないでしょう(大企業では特に)。社内で影響力がある人を責任者に据えたり、現場に声が届く人を補佐にするなど、人選が重要になってきます。

 権限も役職も与えられない状態で、1人のデータサイエンティストが他業務もこなしながら会社を変えることは不可能です。上層部がとるべき配慮として、参考になる描写でしょう。

データをどうやって入手するか

 一定の権限を持つ主人公ですが、戦艦の建造に関わる資料は軍事機密を理由に一切閲覧できません。そこで主人公は自ら軍港に足を運び、当時最大級の戦艦に直接乗艦します。そこで設計図を盗み見し、巻き尺で測定し、部下に歩幅で全長を測らせるなどして、自力でデータを集めていきます。ばれたら軍法会議にかけられるような問題行動ですが、目的のためにあらゆる手段を駆使してデータを集める姿勢は見習うべきでしょう。

 データサイエンティストの悩みとして「データが集まらない」というものがありますが、待っているだけではデータはやって来ません。できないと決めつけて諦めるのではなく、必要なデータを集めるべく自分から動いてみましょう。

 現代の企業においても、データの扱いを形式主義に偏重しすぎるのは問題です。組織内での縄張り争いに終始せず、目的のためにお互い協力しましょう。現場に出向いて自分で調べることは時代を越えても重要といえます。

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