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Amazon流イノベーションの起こし方 元幹部のデータサイエンティストが語る(3/4 ページ)

» 2019年09月25日 07時00分 公開
[松本健太郎ITmedia]

 Problem(問題・課題)、Hypothesis(仮説)、Action(行動)、Metrics(指標・測定)、Experiment(実験)の頭文字を取ったPHAMEフレームワークは、ワイガンド氏の「分析を通じて成果を出すためのフレームワーク」といってもいいでしょう。最後を実験とするあたりは、物理学者であるワイガンド氏らしいといえます。

 特に重要なのは行動と実験で「仮説が浮かんだら、いろいろ考える前にとにかく行動し、実験するべき」とワイガンド氏は主張します。良い実験のためには、良い仮説が必要ですが、「じっくり考えるより、とにかく動いてみるのが大事」(ワイガンド氏)といいます。

 PHAMEフレームワークを社内で推進するに当たり、ワイガンド氏は次のように指摘します。(1)データから始めず、まず疑問から始めること、(2)結果がどうであったか分かるように、データに基づく意思決定をし、それに伴う行動を取ること、(3)透明性を重視すること、(4)お客様を尊重し、権限を与えること――です。

 (1)と(2)は、データ分析とそれに伴う意思決定の話で、(3)と(4)は顧客に対する姿勢や心構えの問題です。しかし(4)が具体的に何を指すのか、最初は分かりませんでした。ワイガンド氏がいう顧客中心は、権限を与えることで顧客のパワーを強くすることを指すようです。

 意思決定に関わる全てが価値あるデータになります。顧客が正しい決断を下せるようにデータを活用し、お膳立てするのもデータサイエンティストの仕事なのです。例えばZOZOTOWNのようなファッションECサイトなら、各ユーザーが好みそうな服を提案するレコメンド機能などが、それに含まれるでしょう。Amazonに限らず、あらゆる企業で応用できる考え方といえます。

 最近は、就活情報サイト「リクナビ」を運営するリクルートキャリアが、リクナビを利用する学生の「内定辞退率」を予測して企業に販売していたことが問題になりました。リクルートキャリアは、リクナビの利用者である学生にデータを扱うための権限を与えていないどころか、尊重すらしていません。顧客の視点が抜け落ちたデータ利用といえるでしょう。

メリットがなければ、顧客はうそをつく

 リクナビ問題は、データの扱いについて非常に考えさせられる事件でした。こうしたデータの扱い全般に関わる重要な問いを、ワイガンド氏は投げかけます。

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