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Amazon流イノベーションの起こし方 元幹部のデータサイエンティストが語る(2/4 ページ)

» 2019年09月25日 07時00分 公開
[松本健太郎ITmedia]

 ワイガンド氏によれば、1970年代にコンピュータが作られて以降、80年代はコンピュータ同士が結合し、90年代にはWebページ同士が結合し(Googleなど)、00年代には人と人が結合し(Facebookなど)、10年代にはデータそのものが結合してビッグデータになり、そして20年代にはセンサー同士が結合するIoT時代が訪れようとしています。それが世界の潮流なのです。

 コンピュータ、インターネット、人、IoT機器など結合する範囲が広がる中、日本では「とにかくデータを集めよ」という号令の下、ひたすらデータの収集に邁進することもありました。

「データドリブン」ではいけない

 しかし、目的がないままデータを集めても、データサイエンティストは「データの質が悪くて使えない」と感じ、意思決定者は「この分析の結果では意思決定に使えない」という事態に陥ります。その間にGAFAのようなIT企業がデータの結合範囲を増やしてその価値を高めていたことを考えれば、日本が「AI後進国」といわれてしまうのもうなずけます。

 あらためて、なぜビジネス戦略を考える上でデータが必要なのでしょうか。ワイガンド氏は「それは顧客の疑問に答えるためであり、顧客により良い問いかけをするためであり、繰り返し行うタスクを見極めて最適化および自動化するためだ」と説明します。

 例えば、「なぜこのシャツは売れないのか」を知りたいとします。時代遅れなデザインなのかもしれない、顧客にとって欲しいサイズではないのかもしれない、などいろいろな仮説が考えられます。そうした疑問に答えるにはどのようなデータが必要かを考え、収集するのです。顧客が何を欲しているのか、より良い問いかけをするにもデータが欠かせません。ワイガンド氏はこうしたデータ戦略をAmazonで徹底したといいます。

 しかし、データに振り回されすぎてもよくありません。ワイガンド氏は「よくデータドリブンといわれるが、それはよくない。われわれ人間がデータをドライブするという意識が必要だ」と指摘します。

Amazon流の「PHAMEフレームワーク」

 ワイガンド氏の考えは、常に顧客中心です。Amazon時代は顧客視点でイノベーションを起こすための「PHAMEフレームワーク」を実行したそうです。

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