「顧客は、データをあなたに提供した際にそれらの価値を理解しているだろうか。またデータを用いることで、あなたの商品やサービスは良くなっていくのだろうか」
アンケートやWebサービスの会員登録など、私たちは日々個人情報を聞かれる機会が増えています。顧客メリットがなければ、むやみに個人情報を集めるべきではないというのです。なぜなら、顧客がデータを提供することで恩恵を受けなければ、名前、メールアドレス、生年月日などで正しい情報を入力しない可能性があるからです。メリットがなければ、顧客はうそをつくかもしれません。
正しいデータでなければ、価値は生まれません。価値を提供できないデータなら、そもそも計測しないほうが良いというのは、もっともだと感じました。サービス事業者は、データを提供することで得られるメリットを顧客に対してしっかり説明する責任があるでしょう。
ワイガンド氏は、さらにわれわれへ問いかけます。
「誰がデータの所有者で、データの所有権とは何なのか。あらゆるものが計測可能な場合、公平性とは何なのか」。こちらはすぐに答えるのが難しい質問ですが、ワイガンド氏はデータを扱う人はこのような問題を考えるべきだといいます。
確かに私たちはデータを「当たり前に計測できるものだ」と考えています。しかし、許可を取って得たデータだけでなく、本人の意思とは関係なく収集されるデータは、もともと誰のものなのでしょうか。
重要なのは、個人と企業がそれぞれの権利を確立することだといいます。例えば個人なら、自分のデータにアクセスする権限や、セキュリティリスクの確認などができる必要がありますし、企業ならデータを使った実験を行う権利、データを移管する権利などが認められるべきだというのです。
こうした権利を確立するには、われわれ一人ひとりのデータリテラシーを高める必要があります。例えば米Facebookは数千万人におよぶ個人情報流出問題で、約50億ドルもの罰金を命じられたとされています。日本円にして約5000億円という大金ですが、ワイガンド氏は「(20億人以上いるFacebookユーザー)1人当たりに換算すると、数ドル程度。こう考えると、果たして罰金の額は高いといえるのだろうか」と疑問を呈します。われわれがデータの価値を知り、法律や規制を作って正しく権利を主張するためには、いろいろな角度で物事を見ていく必要があるでしょう。
果たして今後、ワイガンド氏が描くようなデータをめぐる組織と個人の関係は円滑になっていくのでしょうか。
株式会社デコム R&D部門マネージャー。 セイバーメトリクスなどのスポーツ分析は評判が高く、NHKに出演した経験もある。他にも政治、経済、文化などさまざまなデータをデジタル化し、分析・予測することを得意とする。 本業はインサイトを発見するためのデータアナリティクス手法を開発すること。
著者連絡先はこちら→kentaro.matsumoto@decom.org
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