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エッジコンピューティングとクラウドの「切っても切れない関係」(2/2 ページ)

» 2019年09月30日 17時21分 公開
[谷川耕一ITmedia]
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エッジコンピューティングのキーワードはリアルタイム

 ここ最近のエッジコンピューティングで重要となっているのが、「リアルタイム」というキーワードだ。数年前までのエッジコンピューティングは、IoTデバイスから生成される膨大なデータをフィルタリングし、クラウドに適切に渡すことに重きが置かれていた。IoTの膨大なデータを処理するのは、リソースを安価かつ潤沢に用意できるパブリッククラウドの役目だったのだ。

 だがここにリアルタイムというキーワードが入ってきたことで、クラウドでは処理が間に合わなくなってしまい、なるべくIoTデバイスの近くで大量データを高速に処理をする重要性が増した。つまり当初のエッジコンピューティングの装置は、どちらかと言えば数多くのセンサーなどを容易に接続できるネットワーク機能に重点が置かれ、あまり複雑で重たい処理をするものではなかった。そのため初期のエッジコンピューティング機器のイメージは、ネットワーク機器のような専用ハードウェアで、「IoTゲートウェイ装置」などと称して各ハードウェアベンダーから提供されてきた。

 それに対してここ最近はIoTゲートウェイと組み合わせて、機械学習のアルゴリズムなどを搭載することで、大量に生成されるIoTデータを高速に処理できる強力なサーバがエッジで使われるようになった。

 例えばDell Technologiesは、電源から空調装置、サーバ、ストレージ、ネットワークなどをコンテナに詰め込んだ、小型のモジュール型データセンターのようなものもエッジコンピューティングと位置付けている。またGPUなどを搭載する機械学習処理に特化した高性能サーバも、エッジコンピューティングの1つとされることがある。

photo Dell Technologiesのコンテナ型エッジコンピューティングソリューション

 HPEの場合は、工場IoT向けエッジコンピュータとなる「HPE Edgeline」のビジネスを強化している。これはIoTゲートウェイ装置とエッジで高速に処理するコンピュートの組み合わせで構成される。工場特有のロボットや制御装置などとスムーズに接続できるよう、工場内で使われる専用ネットワークプロトコルなどにも対応する。例えば「HPE Edgeline EL300 Converged Edge System」は、エッジで膨大なデータを処理、分析し、必要なデータだけをクラウドなどに送る専用マシンと位置付けられる。

photo HPE Edgeline EL300

クラウドとエッジは切っても切れない関係性にある

 今後はリアルタイムな処理がエッジ側で行われることになるが、そのためにエッジのサーバで必要となる機械学習アルゴリズムなどは、クラウド側で生成されるのが普通だ。従ってIoTデバイスから生成されたデータは、エッジのリアルタイムな処理とは別に適宜パブリッククラウドのビッグデータ環境などに集められ、そこで分析されアルゴリズムが作られる。そこで得られた結果がエッジ側に随時実装されるのだ。つまり多くのIoTデバイスとエッジコンピューティングは、リアルタイムがキーワードとなりエッジ側に処理がシフトしても、クラウドとは切っても切れない関係性にある。

 ところで同じようにオンプレミスにあるプライベートクラウドと、エッジコンピューティングとでは何が異なるのだろうか。

 前者は従来の基幹系アプリケーションやWebベースの新しいアプリケーションなどさまざまなものを、オンプレミスで効率的に稼働させるプラットフォームと捉えられる。汎用性が高く、仮想化技術を使い効率的に拡張できるなどが特徴となる。さらに、パブリッククラウドとは基本的に同じアーキテクチャをとることで、さまざまなパブリッククラウドとシームレスに連携できるようにするのもトレンドだ。

 エッジコンピューティングの場合は、プライベートクラウドよりは専用性が高くなる。そのため特定の処理に特化するための構成をとる。クラウドとはシームレスな連携より効率的なデータ転送が重視されることが多い。もちろん拡張性も重要だが、高度なリアルタイム処理に重点が置かれることが多い。

 違いがあるもののプライベートクラウドとエッジコンピューティングの間に、明確な境目が存在するわけではない。前述のDell Technologiesが提供するモジュール型のコンテナデータセンターのようなものは、プライベートクラウドでもエッジコンピューティングでも使えるはずだ。これ1つで、両方の機能を共有することも可能だろう。

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