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» 2019年10月11日 08時00分 公開

Apple、Amazon、Microsoftのハードウェア戦略を俯瞰する (1/3)

3社の発表イベントを全て取材した筆者が、プラットフォーマーのハード戦略を分析。

[西田宗千佳,ITmedia]

 9月頭からの1カ月間で、Apple、Amazon、Microsoftと、3社の大手プラットフォーマーを取材した。それぞれ大量に記事を書かせていただいたし、まだまだ露出予定のレポートもある。個々の発表内容についてはすでにご存じの部分も多いだろう。

 今回の取材の共通点は、「3社ともハードウェアが主軸の発表であった」という点だ。ハードウェアは人とサービスの接点であり、欠くべからざるものだ。大手プラットフォーマーであればあるほど、自社の方向性とあり方を消費者に示すために、ハードウェア事業を必要としている。

 そして、3社を回って感じたのは、「その方向性やフィロソフィーが明確に異なる」ということだ。過去からそうだったのだが、今回は特にそれが明確になったように思う。

 3社の違いとは何なのか? ここで改めてまとめてみたい。

この記事について

この記事は、毎週月曜日に配信されているメールマガジン『小寺・西田の「マンデーランチビュッフェ」』から、一部を転載したものです。今回の記事は2019年10月7日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額648円・税込)の申し込みはこちらから

「2億台」前提のApple、数を背景に次を狙う

 まずAppleから行こう。

 新製品であるiPhone 11シリーズは、カメラが2つないしは3つになり、「ボトムズっぽい」「タピオカっぽい」と、クラスターによって真っ二つに分かれるコメントがあふれた。デザイン面では、必ずしも好評とはいえなかったように思う。

 だがフタをあけてみると、iPhone 11は売れた。報道でも販売の好調さが伝えられているし、実際、何度か訪れたアメリカのApple Storeにも、発売から2週間が経過し、しかも平日にもかかわらず、iPhone 11を求める人の列があったほどだ。

photo ニューヨーク五番街にあるApple 5th Avenueの中。火曜だというのに、店内はiPhone 11を求める人で賑わっていた

 ポイントは2つあると思っている。

 新しさがわかりやすいこと、そして、すでに得ている顧客層と親和性が高いことだ。

 実際、iPhone 11はよくできている。驚くほどの斬新さがあるか、というと、ないのだが、「とりあえず超広角をつけてみました」という製品でもない。これまでiPhoneを使っていた人が自然に使えて「ああ、いままでこんなに不便だったんだな」と理解できる製品だ。周囲に使っている人が増えるほど、そうした価値が伝わりやすくなる。

 「Androidには超広角はすでにある」「iPhoneにしかない特別なものはない」のは、その通りなのだが、そんなことはAppleもよく分かってやっている。

 1000万台しか出荷できない特別なものを作るのではなく、「2億台出荷できる過去よりも進化したもの」を提示するのが、今のAppleのハードウェアの形だからだ。iPhone 11はまさにそういうハードである。「凡庸で面白くない」のでは買ってもらえないが、「違いが大きすぎて大量に作るのが困難」なのでは、今のAppleのビジネスにはならない。だから、自社内で差別化できるソフトとサービスで変化を「盛って」、2億台作るハードをデバイスの新しさ以上に新しいものだと体感させるようにしているのだ。

 これはある意味「ファンビジネス」だが、圧倒的な数を確保していることが大きい。

photo iPhone 11発表会より。「Appleだから」というメッセージが伝わるユーザーの「数」がなによりの強み

 だが、いつか数が維持できなくなる時が来る。変化が小幅なら当然だ。

 そのために、Appleは2つの施策を用意している。

 1つが「中古買い取り」だ。今回は発表会の中でも触れていたが、どうやらアメリカでの利用者は思った以上に多く、市場活性化に一役買っているらしい。日本でも、携帯電話事業者による買い取り制度を前提に買い換える人は多く、このスキームは「iPhoneを乗り換え続ける」人に、特に有効に働いているように思える。

 もう1つが「次への布石」だ。

 Appleの場合、布石の方向性は明確。ARグラスだ。iOS 11から登場した「ARKit」は、着々と進化している。はっきりいって、今iPhone上で使われているアプリレベルなら、ここまで進化させる必要はない。明確に「先の準備」として、かなり先行投資として開発が進んでいるのが明白だ。

 iPhone 11では超広角カメラとUWBによる位置・方向推定が搭載された。カメラの画角が増えた結果、画像認識を使った「奥行き推定」の精度は高めやすくなる。UWBによる位置・方向推定は、他のApple製品との組み合わせによって、「どこになにがあるか」の位置合わせ精度を高めることにプラスになる。

 筆者の推定として、AppleのAR展開はいくつかのステップを経るだろう、と考えている。その予想も立ててあるが、その開陳はまた別の機会としよう。どちらにしろ、ARのような新しい要素を「実験的でなくちゃんとした完成度で」「いきなり数百万台売る気で」展開し、ジャンプアップしようとしている。そういうことが可能なのも、「2億台売る」iPhoneに対してコストを分散し、長期計画で進化を埋め込んでいるからに他ならない。

 Appleは徹頭徹尾「数の会社」であり、ジョブズがiPhoneを発表した2007年とは違う。ティム・クックの戦略は全てが「巨大化したApple」を前提に構築されている。

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