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「休日に会社の同僚と遭遇しないための動き方」を物理シミュレーションとゲーマーの英知で解き明かすデータサイエンスな日常(3/4 ページ)

» 2019年10月15日 07時00分 公開
[篠田裕之ITmedia]

プレイヤー1:ダックステップ

 まずはプレイヤー1。彼は、常に同僚の視線を遮る状況を保ちつつ前進する方法を模索することで達成率を向上させた。そのための戦術が「ダックステップ」だ。

 まずゲーム開始時に、周囲の状況を確認する。対面の通行人が少なく、かつ同じ方向に歩く人を見つけたら、あとはその人の少し後ろにぴたりとくっつくだけだ。その通行人を壁にして同僚の視線を防ぎつつ、最短でゴールに向かう──親のすぐ後を追いかけるアヒル(ダック)に見えることからダックステップと名付けた。

 本シミュレーションでは通行人同士が対面すると道を譲り合う仕様にしている。そのため、対面に通行人が多い場合は時間をロスし、同僚との遭遇率が高まってしまう。開始時の状況から対面人数が少なそうな通行人(親アヒル)を選ぶこの手法は、シンプルだが効果は大きい。

 ただし、シミュレーション環境では、通行人の歩行速度にばらつきを持たせている。もし歩行速度が私より速い人の後をダックステップしようとした場合、置いていかれてしまい、途中で不意に視線を遮る壁がなくなることになり、同僚に見つかってしまうリスクは高まる。

プレイヤー2:さざ波歩行法

 次に、プレイヤー2。彼女は、ゲームをハックすることに長けている。私の歩行速度は一定であるが、これをさらに速くするにはどうすればよいかと考え、「さざ波歩行法」を生み出した。これは、私の後ろに私より足の速い通行人がくるように移動することで、通行人に体を押してもらい、通常よりも速く移動するというものだ。

 現実空間で解釈すると、速く歩く人が後ろにいることで、歩くのが遅い私でもプレッシャーを感じて強制的に小走りにならざるを得ないようなイメージだろうか。現実では他の通行人の邪魔になるような行動は控えるべきであり、むやみに前にカットインすることも避けたほうがいいだろう。そのため、本手法の現実への応用は難しそうだ。

 ただシミュレーションにおいて、このような方法論を模索することは、目的達成とは別の観点、例えばマナーを考えるきっかけになるという点で有用だと考える。

 本手法は移動が速くなる分、同僚が出現してからの猶予時間が短くなることや、後ろの通行人が邪魔になって引き返しづらいことから、他のプレイヤーの方法と比較して達成率は低くなっている。

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