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» 2019年10月28日 07時00分 公開

「本当にテレワークは必要なのか」を考えるための論点 (3/4)

[小林啓倫,ITmedia]

 1つ目のメリットは、顔を合わせることでコミュニケーションが容易になるという点である。テクノロジーの進化でさまざまなコミュニケーションツールが生まれたが、伝わる・伝えられる情報量の多さと手軽さという点では、対面でのやりとりに勝るものはない。テレワークでそれが不可能になれば、指示・報告内容の誤解による手戻りや、テレワーカーの心理的・身体的問題への気付きの遅れ、ツールを介したコミュニケーションによる負担の増加といった問題が拡大するだろう。

 2つ目は、仕事とプライベートが明確に切り分けられるという点だ。物理的に移動するのは大変だが、それにより「仕事の時間・空間」と「余暇の時間・空間」がはっきりと分かれる。仕事の空間には「仕事に必要なもの」しかないはずなので、気が散る可能性が減るというメリットも考えられる。

 この点は、テレワークで全く実現できないわけではない。サテライト型テレワーカーは、コワーキングスペースなど通常のオフィスに近い空間で働いているはずだし、モバイル型テレワーカーも自分にとって集中力の途切れない環境を選ぶことができる。ただし、いつでもどこでも働けるので、仕事のやめどきが分からず、労働時間が増えてしまうケースは考えられる。

 実際に平成29年度テレワーク人口実態調査によると、アンケート対象者の34.7%が「仕事時間(残業時間)が増えた」と回答しており、マイナス効果の第1位となっている。残業を減らすための働き方改革で残業時間を増やしてしまっては本末転倒だろう。

 そして3つ目のメリットが、仕事に適した空間を低コストで実現できる点だ。例えばセキュリティ面を考えると、仕事の空間が限定されているほうが企業にとっては望ましい。機密書類や新商品のプロトタイプなど、物理的に重要なモノは金庫や鍵のかかった部屋に保管しておけば良いし、データをやりとりするときもセキュアな社内ネットワークを用意しておけば済む。

 しかし、テレワークによって仕事をする人があちこちに点在することになれば、その対応でセキュリティにかかるコストは上昇する。コストが増えるならまだしも、これまで想定していなかったリスクや攻撃が発生するかもしれない。

 もっと単純な例も考えられる。例えばオフィスには、広いデスクや座りやすい椅子、飲み物やお菓子、大きなモニターや高度な複合機などがあり、「仕事をしやすい環境」が整っている。これらを個人でそろえ、オフィスと同じくらいの生産性を自宅で実現するのは至難の業だ。

 平成29年度テレワーク人口実態調査におけるアンケートでは、テレワークによるマイナス面の効果の第2位に、「業務の効率が下がった」(28.2%)がランクインしている。これは先ほどの「仕事とプライベートを切り分けるのが難しい」が原因になっている可能性もあるが、オフィス並みの仕事環境を全てのテレワーカーに提供できないという点が、少なからず影響しているだろう。

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