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「フェス化」で激変する東京モーターショーのかたちスマートモビリティーで激変する乗り物と移動のかたち(3/3 ページ)

» 2019年10月31日 08時00分 公開
[野間恒毅ITmedia]
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1980年代を彷彿(ほうふつ)させる二輪ブース

 EV化とコネクテッドで未来を魅せる四輪に比べ、二輪ブースは1980年代にタイムスリップしたかのようだ。

 カワサキでは250cc 4気筒エンジンを新開発、搭載した「Ninja ZX-25R」を参考出品した。この背景には活況を呈するアジア、インド市場において主流だった110〜125ccからマーケットが250ccクラスへ拡大、高性能化を市場が求めていることが挙げられる。

photo カワサキ Ninja ZX-25R 写真撮影:筆者

 特に一昨年ホンダが投入した「CBR250RR」は約80万円という高額ながらも発売後爆発的な人気で品薄、納車待ちが発生。他社メーカーの動向が注目されていたが、今回噂通りカワサキが高性能な4気筒エンジンを投入したことで更に活性化しそうだ。

 スズキでは既にインドで販売されている「ジクサー250」の日本販売を発表。ジクサーとは1980年代の名マシンGSX-Rの英語読みであるが、そのGSX-Rで使われた油冷エンジンを彷彿とさせる新開発の油冷エンジンを搭載、空冷単気筒ながらも高回転、高出力化を達成。シンプルな構造から求めやすい価格になるとみられている。

photo スズキジクサー250SF 写真撮影:筆者

 ヤマハでは往年のオフローダー「テネレ」を復活。こちらはMT-07に搭載され定評のある700ccエンジンを共通で使用することで高騰する開発費を抑え、ラインアップを広げている。シンプルな装備と見た目で「走り」を予感させヨーロッパを中心に人気となっているが、これが今回日本市場に投入されることが決まった。

photo ヤマハテネレ700 写真撮影:筆者

 ホンダでも往年の名機「ハンターカブ」を復活させた。カブをベースにしたオフロードタイプといえばクロスカブがあるが、もっと本格的なオフロードタイプとなる。今回発表されたハンターカブは、ブロックタイヤにアップマフラーといったオフロードの「記号」を備えたことで初見の人にアピールするだけでなく、往年のハンターカブのモチーフを随所にちりばめることで、よく知っているひとほど唸らせるほどの出来栄えが高評価である。

photo ホンダハンターカブ 写真撮影:筆者

 販売台数の数字だけ見ると日本の二輪市場は低迷を続けているが、活況を呈するアジア・インド市場のおかげで魅力的な新型車が次々と日本市場に投入されるのが興味深い。

 特に子育てが終わったアラフィフ世代のリターンライダーと、自動車は維持費が高く所有できない20代が買いやすい二輪を買うという二極化があるが、新型車の投入はどう作用するのか。

 一気にEV化しなくとも、普段乗っている自動車から二輪にするだけでエミッションや渋滞を少なくする効果があるため、その点でも二輪を再評価してもいいだろう。

新型車発表会からフェスへ

 年々来場者数が減少しているモーターショーであるが、これは東京に限ったことではない。フランクフルトやパリでも同様の傾向で、さらに状況は深刻といわれている。この背景にはモーターショーの数が多く飽和していることや、インターネット時代となり情報が瞬時に共有されることから、これまでのように大混雑する会場にわざわざ足を運んでまで見る必要もなくなったことがある。新型車なら近くのディーラーでお茶を飲みながら眺め、試乗したほうがタダだしよっぽど快適である。

入場料を払ってまで来る価値を提供できるか?

 今回の東京モーターショーはこれまでの新型車発表会から一歩踏み出した。まずは会場構成、今回東京展示場駅前のみだった会場を青海駅周辺まで拡大し、ビッグサイトのサテライト会場、MEGAWEBをメインプロムナードでつないだ。

photo 青海会場 写真撮影:筆者

 これまでは東京モーターショーを見に来る目的意識のはっきりしている来場者だけだったのが、ビーナスフォートや観覧車、実物大ガンダムなど、外国人観光客の多い青海駅周辺まで広げ、プロムナードやMEGAWEBなどは入場料も不要、また夜はドローンによるショーを開催したりと一般客を取り込もうとチャレンジをしている。

 キッザニアと連携しカーメーカーの仕事を体験できるブースを設けたり、パーソナルモビリティに試乗できるようにしたりと、これまでは単に見るだけだったものをより体験させる方向にシフトさせたのが特徴だ。

photo キッザニア 写真撮影:筆者

 同時に会場が広すぎて全部見るには1日では難しい、導線が分かりにくいといった問題も指摘されているが、モーターショーの置かれた状況を鑑みると、変革期への対応としてこのチャレンジは評価したい。

 アーティストのワンマンライブに対し、さまざまなアーティストが出演する野外フェスがあるように、芸人ヒロシや漫画「ゆるキャン△」で注目されている一人でキャンプを行う「ソロキャン」と、数千人を一同に集め夜通しライブ、イベントを行うGO OUT CAMPがどちらも人気であるように、人々はモノからコト、体験へと興味をシフトさせている。

 モーターショーも例外ではなく、今回の東京モーターショーはフェス化の始まりなのかもしれない。豊かさの象徴だったモータリゼーション、購入自体が目的だった時代から今後は人生に華を添えるコンパニオンアニマルのような存在に自動車、バイクがなっていくのだろう。

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