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「お坊さん便」にお布施を上乗せできる機能 利用者が支払額を決定

» 2019年11月05日 17時03分 公開
[谷井将人ITmedia]

 ITベンチャー企業のよりそう(東京都品川区)は11月5日、僧侶を手配できるサービス「お坊さん便」に、お布施を上乗せできる機能「おきもち後払い」を導入した。料金を後払いとし、法事の満足度が高かった場合には基本料金に上乗せした金額を支払う。料金の分かりやすさを損なわず、お布施として気持ちを金額に反映できるという。僧侶側は法事の内容についてフィードバックが得られるため、サービス向上に生かせる。

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 お坊さん便は、定額料金で読経・法話を僧侶に依頼できるサービス。よりそうが利用者と僧侶の間を取り持ち、「僧侶を呼びたいがお寺とのつながりがない」という利用者の課題を解消する。定額料金でサービスを提供し、「お布施をいくら包めばいいのか分からない」といった不安にも対応する。

 料金が明確であるという利点がある一方、法事の満足度が高い場合もお布施を増やせないという欠点もあった。同社によると、利用者からは「お礼や供養、信仰の気持ちから、費用とは別にお布施を渡したい」という声が上がっていたという。

 おきもち後払いは、「僧侶は礼儀正しかったか」「法事の内容に満足したか」といった評価項目に7段階で答えると、最終的な支払額が決まる仕組み。満足度が高いほどお布施の金額も上がる。基本料金があるため下限はあるが、利用者の裁量でお布施の金額を決められる。支払いは銀行やコンビニなどで振り込む。

photo おきもち後払いの評価画面

 法事の内容についてコメントを付ける機能もある。不満がある場合や、お布施は追加できないがお礼を言いたい場合などはコメントを送って表現できる。僧侶は普段、法事についてフィードバックをもらうことはあまりないため、反応があるとモチベーションが上がるという。

胸を張って「お坊さん便に登録している」と言えるようなサービスにしたい

 お坊さん便のサービスはこれまでAmazon.co.jpでも出品していたが、19年10月、「仏事そのものが『出品』されたかのような誤解が生じたり、大手ECサイトに掲載できる情報量では供養の役割を十分伝えられなかった」としてAmazon.co.jpへのお坊さん便のサービス出品を終了した。

 全日本仏教会は2015年12月、同サービスについて「宗教行為を定額の商品として販売することに大いなる疑問を感じる」と表明し、16年3月にはアマゾンジャパンと米Amazonに同サービスの販売中止を要請する文書を提出した。

photo お坊さん便手配事業部の小野敬明部長

 お坊さん便手配事業部の小野敬明部長によると、全日本仏教会の批判を受け、お坊さん便に登録している僧侶からは「お坊さん便を使っていると周囲に明かせない」という声が上がっているいう。

 おきもち後払いは利用者のニーズに沿って導入したサービスだが、全日本仏教会の批判にも一部対応する形になる。利用者の裁量によってお布施の金額をある程度自由に設定できるため、よりそうは「一般的なお布施と同じく利用者の気持ちを表現しやすくなる」としている。

 「菩提寺とのつながりがあまりない現代において、お寺と利用者をつなぐサービスには利用者と僧侶の双方から需要を感じている。定額サービスであることにこだわっているわけではなく、利用者が良いと思う方法が見つかれば導入していきたい。最終的にはお坊さんが胸を張ってお坊さん便に登録していると公表できるようなサービスにしていきたい」(小野敬明部長)

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