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商品の需要予測にツイートを活用 日本気象協会、「暑い」「寒い」など人の体感を見える化

» 2019年11月07日 18時58分 公開
[佐野正弘ITmedia]

 Twitter Japanと日本気象協会は11月6日、ツイートと気象データを活用した需要予測の取り組みに関する説明会を開催した。「暑い」「寒い」などのツイートを基に、人の体感を数値化して商品の需要予測の精度向上に役立てる狙い。同協会は7月から体感指数を使った小売向け需要予測サービス「売りドキ!予報」の全国版を提供しており、既に在庫を35%削減した食品メーカーもあるという。

「暑い」「寒い」 つぶやきから“体感”を数値化

日本気象協会の吉開朋弘さん(防災ソリューション事業部先進事業課 シニアアナリスト)

 日本気象協会は、気象予測データやPOSデータなどのビッグデータをAIで解析する商品の需要予測サービス「eco×ロジ」を提供している。日本気象協会の吉開朋弘さん(防災ソリューション事業部先進事業課 シニアアナリスト)によると、これまでの気象予測データの提供は鉄道や自治体などインフラ関連企業に限られており、ビジネス活用があまり進んでいなかった。

 同協会は、ビジネス活用を促進する上での課題だった予測精度の向上に取り組んだ。そこで人の体感を数値化できないかと考え、「Twitterのデータに目を付けた」としている。


 Twitter Japanのマーケット・リサーチ ディレクターである岡野雅一さんによると、日本におけるTwitterの月間アクティブユーザーは4500万人以上。「発売」「欲しい」「買った」など商品の購買に関連するツイートは年間で2.3億以上投稿されており、ツイートをマーケティングに役立てる研究を進めているという。

 日本気象協会は体感を推定するに当たり、過去4年間のツイートデータの中から位置情報が付いた約1600万の日本語ツイートを収集し、「暑い」「寒い」という言葉が含まれるものを抽出して集計した。

 気温が同じ30度であっても、急激に気温が上がった日は「暑い」というツイートが多くなり、暑い日が続くと体が慣れて「暑い」というツイートが少なくなるなど、気温だけでは表せない特徴が浮かび上がってきたとしている。

 吉開さんは、「ツイートの傾向を気温以外の要素と比較したところ、日射量がツイート数に大きな影響を与えていることが分かった」と話す。気温と日射量、気温の急激な変化、“暑さや寒さへの慣れ”などは、それぞれツイートと高い相関関係にあるとしている。

 こうした体感データは、−100から100の「体感指数」で表される。体感指数を使った需要予測に取り組んでいる食品メーカーの中には、在庫を35%削減できた例もあるという。

 同協会は現在、体感指数を使った需要予測サービス「売りドキ!予報」の全国版を小売向けに提供している。全国の市町区村ごとに体感指数を予測し、550カテゴリにわたる商品の需要を予測するというものだ。

 既に30の店舗に導入されているが、課題もある。ツイート数が関東や若年層の多い都市部に集中しているため、地方のデータが足りていないという。吉開さんは「特定の地域に特化した体感指数をいかに算出するかは今後の課題。能動的にツイートしてもらえるような仕組みを用意できれば、より狙い通りのデータを収集できると考えている」と語った。

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