「データこそが人類に力を与え、進化の源になる」――。米Dell Technologiesのマイケル・デル会長は、デルとEMCジャパンがこのほど開いたカンファレンス「Dell Technologies Forum 2019-Tokyo」にサプライズ登壇し、こう語った。
2016年に米Dellが米EMCを買収したことで誕生したDell Technologiesだが、それぞれの日本法人は今も別法人として存続している。現在は経営体制の統合が進行中で、8月からは大塚俊彦氏が2社の代表取締役社長を兼務している。カンファレンスでは大塚氏があいさつした後、当初予定になかったデル氏が登壇し、会場のボルテージを一気に高めた。
デル会長は、AIやIoTなどの発達により、流通するデータ量が増大し続けていることに言及。「2007年の時点では、米国のモバイルネットワークに流れるデータ量は、年間86ペタバイトだった。だが、2019年になると、18時間で86ペタバイトに増加した。10年後の2030年には、10分で86ペタバイトが流れるだろう」と予測した。
さらに、「進化したテクノロジーと膨大なデータを使いこなすには、シンプルかつオープンで、統合化された運用環境の構築が不可欠だ。当社は、クラウドやセキュリティ企業の買収、VMware社とのコラボを通じて、それを提供できる独自のポジションを築いた」と強調。
「パブリッククラウド、マルチクラウド、オンプレミス、エッジコンピューティングといったマルチな環境でもデータの流動化を後押し、断片化を起こすことのないソリューションを届けていきたい」と熱弁を振るった。
次に登場したのは、Dell EMCインフラストラクチャ ソリューションズ グループ最高技術責任者(CTO)ジョン・ローズ氏。「あらゆるテクノロジーが登場し、ものすごい速度で進化している現代では、データやテクノロジーを“コスト”と考えてはいけない。このチャンスを生かすべきだ」と聴衆に語りかけた
ローズ氏は、同社が顧客企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)をサポートする上で重視しているポイントに言及。「AI」「ハイブリッドクラウド」「エッジ」「ソフトウェア・ディファインド」といったキーワードを列挙した上で、「DXを成功させたければ、IT戦略をマルチクラウドベースで立案し、多様性のあるアプリケーションを、システムとしてまとめ上げる環境を構築すべきだ」と提言した。
続いてゲスト登壇したのは、三越伊勢丹でデジタル事業部門長を務める浦田努氏(デジタル事業部 取締役常務執行役員)。同社は創業346年の伝統ある企業だが、Dell Technologiesのサポートの下でDXを推進。「店頭で店員が接客・販売する」という古くから続くスタイルからの脱却を目指している。
浦田氏によると、いま三越伊勢丹が掲げているテーマは「オフラインでもオンラインでも最高の顧客体験を提供する」。実現に向け、各種センサーを駆使した店内のIoT化やECサイトの強化などを進めているという。
その一環で始めた「Your FIT 365」は、3Dスキャナーで顧客の足型を計測し、顧客の足にピタリとフィットする靴を提案するサービス。計測したデータや、おすすめの靴の一覧は、iPadなどのタブレット端末に表示する。この仕組みを導入しているブランドの靴は、そうでないブランドと比較して150%多く売れているという。
同じく「Hi TAILOR」は、オンラインで完結するシャツのカスタムオーダーサービス。正面と横から撮影した2枚の写真をスマートフォンで撮影して送信するだけで、技術者が採寸したのと同程度の正確性で寸法を測定できるという。
酒や菓子などのギフトを扱うECサイト「MOO:D MARK」は、ユーザーが3点の質問に答えるだけで最適なギフトを提案する機能を実装している。届け先の住所が分からない場合は、SNSのアカウントに商品のリンクを送信すると、相手が自ら住所や日付を入力して受け取ることができる。
浦田氏はこうした取り組みを紹介した後、「インターネットによるビジネス環境の変化は、百貨店業界にとって脅威というよりチャンスだ」とし、「2000年頃から続くデルとの協力関係のもと、今後もDXを推進する。蓄積したデータの一元的な活用を目指し、マルチクラウド化を進めていく」と力強く語った。
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