ITmedia NEWS > STUDIO >

こっちの沼は深いぞ、自作キーボード組み立て入門 左右分離型の「Corne Cherry」で各工程を解説ハロー、自作キーボードワールド 第2回(2/5 ページ)

» 2019年11月28日 14時00分 公開
[ぺかそITmedia]

その他準備するもの

打鍵感の要「キースイッチ」

 キースイッチは打鍵感を決定するための最重要部品である。メカニカルキーボードについて少し調べたことがあれば、「赤軸」「青軸」「茶軸」といったスイッチの軸の色に基づいた呼び方を聞いたことがあるだろう。メジャーなものとしては独Cherry製の「Cherry MX」シリーズがある。近年ではこのCherry MXの互換品を複数の会社が数多く販売しており、軸の色では分類しきれないほどだ。キースイッチだけで一つの記事が書けてしまうのでこれ以上は割愛するが、打鍵感を求めてあれかこれかと試行錯誤するのは、自作キーボードの“沼”要素の一つでもある。

今回はカナダZeal Generation(ZealPC)のPurple Zealios 65gを使用した。鮮やかな紫色の軸を持つこのスイッチはタクタイル感と呼ばれる絶妙な抵抗感と独特なスムーズさを兼ね揃えた一品だ。キースイッチの中では高価な部類になるが、筆者としてはそれほど払ってもいいと思えるほど好みの打鍵感だ。今回Corne Cherry用に42個用意した

【訂正:2019年11月28日午後7時 スイッチの製品名に誤りがあったため、修正しました】

デスクの上を彩るキーボードの“顔”

 キーキャップはいわば、デスクの上を彩るキーボードの“顔”であり、これもまた素材や形状で多くの種類がある。指が直接触れる部分であるため打鍵感にも影響してくるが、見た目を優先して選んでもいい。Corne Cherryのような一般的ではない配列では汎用品の交換用キーキャップが一部使えないため、選択肢が限られてくる。組み立てようとするキーボードに対して数が揃っているか、形状が合うかなどをしっかりチェックしよう。

今回は国内コミュニティー発で企画されたMDA ORTHO VoIDキーキャップセットを使用した。日本の自作キーボードに向けて設計されているため含まれるキーキャップもキーボードキットに合わせやすい数になっている。セットの価格も(キーキャップにしては)安価

 他には、PCとつなぐためのUSBケーブル(Corne CherryはA to MicroUSB Bタイプ)と左右のキーボードを接続するためのTRRSケーブル(4極イヤフォン端子のオス−オスケーブル)が必要となる。

組み立て

 内容物のチェックが終わったら組み立てを始める。組み立てにははんだごて、はんだ、ピンセット、ドライバーなどの工具が必要になる。普段あまりこの手の工作をしない人にとっては道具をそろえるところからという人も多いだろう。

 今回の記事や前回の連載で紹介している遊舎工房では、秋葉原の実店舗で工作室の時間貸し出しを行っている。はんだごてなどの各種工具も借りられるので、工具の購入はともかくまずは組み立ててみたいという人は訪れてみるのもいだろう。もしくは、周囲に自作キーボードを組み立てたことのある人や電子工作経験者がいれば、そういった人たちに相談して貸してもらうというのも手だ。

道具を買うなら「テスター」も

 道具をそろえようとする人に対して一つ付け加えるとするならば、安価なものでよいので導通チェック機能を持つテスターを購入することをおすすめする。これは自分自身ではんだ付けの不備をチェックするだけでなく、うまく動かないなどトラブルが起きたときに、コミュニティーに相談する場合にはテスターでの導通チェックをほぼ確実に求められるからだ。「自作キーボードが動かない原因の9割ははんだ付け不良」といわれるほどなので、テスターは持っていて損はない。

汚い机で恐縮だが筆者の作業風景の例。はんだ付けは高温を伴うため注意し取り扱うこと

 基本的に、各自作キーボードキットの組み立て方法は、設計者がビルドガイドという形で公開している。各キットを実際に組み立てる際には、それぞれのビルドガイドを参照しながら進めてほしい。

右手側と左手側を決める

 組み立てを始める前に基板を左右に並べ、どちらが右側と左側になるか決めてから作業を進めよう。Corne Cherryだけでなく左右分離型キーボードの基板の多くは、左右で同一の基板を用い、片方を裏返して使うことで左右のキーボードとしている。これを決めないと組み立て途中で右手側を2つ作っていた……なんてことになりかねない。

ダイオードの取り付け

 まずは基板にダイオードをはんだ付けしていく。詳しい説明は省くが、ダイオードはキーボードの複数キーの同時押しを正しく検出するための部品だ。小さい上に向きのある部品のため難しそうに見えるが、ピンセットを駆使して基板のマークに合わせ、片方ずつはんだ付けを行えば確実に取り付けられる。

ダイオードを全て取り付けた図。これを両手分行うダイオードを全て取り付けた図。これを両手分行う ダイオードの向きはダイオードに印刷された線を見ると分かる(写真左)。基板にもダイオードの向きが印刷されている(写真右)
ダイオードは部品にラインでマークがつけられており、これを基準に基板のシルク(マーキング)に合わせてはんだ付けをしていくダイオードは部品にラインでマークがつけられており、これを基準に基板のシルク(マーキング)に合わせてはんだ付けをしていく ダイオードは部品にラインでマークがつけられており、これを基準に基板のシルク(マーキング)に合わせてはんだ付けをしていく。最初に片側のパッド(金色のはんだ付け箇所)にはんだを少量盛っておき、ピンセットでダイオードを保持しながら盛ったはんだを溶かし、部品を取り付けるとうまくいく。その次にもう一方をはんだ付けする
ダイオードを全て取り付けた図。これを両手分行う

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.