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» 2019年12月13日 18時49分 公開

自動でハンコ押すロボット、なぜ開発? 提供元・日立に聞く 「ニーズある」と調査で手応え

ロボットとRPAを活用して、契約書などへの押印を自動化するサービスが発表され、ネットで議論の的になっている。このサービスを企画し、提供窓口を担う予定の日立キャピタルに、その意図を聞いた。さまざまな事情でペーパーレス化に踏み切れない企業をサポートする狙いがあるという。

[濱口翔太郎,ITmedia]

 「ロボットにハンコを押させるくらいなら、ハンコ文化をなくすべきだ」「技術の無駄遣いではないか」――ロボットに書類の押印をさせるサービスを巡り、ネットで議論が巻き起こっている。きっかけは12月11日に、デンソーウェーブ、日立キャピタル、日立システムズが、ロボットとRPAを活用して契約書などへの押印を自動化するサービスを2020年3月に月額制で始めると発表したことだ。

 このサービスは、デンソーウェーブのロボットアーム「COBOTTA」2台とカメラで構成された専用のマシンを、PCに接続することで稼働する予定。COBOTTAは、アームの先端に装着した社印を押す作業と、書類のページをめくる作業を自動で担う。ページをめくるたびにカメラが書類を撮影し、システム側で押印欄を識別する仕組みだ。

photo デンソーウェーブ、日立キャピタル、日立システムズが提供予定の「自動でハンコを押すロボット」

 RPAは、カメラが撮影した書類の画像を分析し、契約書・請求書といったカテゴリー別に分類。種類ごとにフォルダを作成し、PCに自動保存する。主なターゲットは、紙の書類をやりとりする文化が残っている金融業界や自治体など。手作業による押印作業を効率化するメリットを見込んでいる。

 だが現代はペーパーレス化が進み、電子書類や電子決裁、電子署名などが徐々に浸透している。そのため、ネット上では「このサービスを使う予算がある企業は、書類の電子化やワークフローシステムの導入に舵を切るべきではないか」という指摘も出ている。

 リリース前から議論の的になっている同サービスは、どのような経緯で企画されたのだろうか――。

COBOTTAの用途拡大に向け連携

 取材に対し、同サービスの提供窓口を担う予定の日立キャピタルの広報担当者は「COBOTTAに産業以外の活用法があると考え、当社からデンソーウェーブにオフィス向けサービスの構想を持ち掛けました。今後は押印にとどまらず、さまざまなオプションを用意する予定です」と説明する。

 COBOTTAの重さは約4キロと軽量で、工場での製造や仕分けにとどまらず、多様な作業に利用できるのが特徴。デンソーウェーブは公式サイトで、COBOTTAが自動で抹茶をたてる映像などを公開し、用途の広さをアピールしている。日立キャピタルも同ロボットの用途拡大に協力する意図があったという。

 「押印サービスはあくまで一例です。これ以外にも、COBOTTAをカメラやRPAと組み合わせたソリューションを、顧客企業のニーズに応じて提供する予定です。COBOTTAはページをめくるスキャナーとしても使え、RPAを使ってフォルダ分けと画像の保存を行うので、利便性は高いと考えています」(広報担当者、以下同)

photo COBOTTAの概要(デンソーウェーブの公式サイトより)

書類を読むのはあくまで人間

 そうした中で“自動押印ロボ”としての用途を強調した理由は、サービス内容の分かりやすさを訴求するためだったという。

 その仕組みに対し、一部では「人間が中身を見ずに、ロボットが社印を押すのか」という疑問の声も出ていたが、広報担当者は「押印の対象となるのは、法務担当者などが中身に目を通し、承認を終えた書類を想定しています」と明言した。「ロボット側が書類の中身を理解するわけではありません」という。

 自動押印というコンセプトを採用した理由は、社風や予算の都合上、どうしてもペーパーレス化に踏み切れない企業・法人が存在することを事前調査で知ったため。「押印作業を自動化してほしいというニーズがあることも調査で確認しました」としている。

 日立キャピタル自身は、社内の決裁の仕組みを電子化するなど、ペーパーレス化を進めているという。広報担当者は「今回のサービスを通して、人の手による押印作業に時間を取られている企業をサポートしたいと考えています」と語る。一部では、サービスの提供元がハンコ文化を重視しているとのうがった見方もあったが、そうした事実はないようだ。

“中継ぎ”としての利用が最適?

 電子化の波が広がっている今も、さまざまな事情で勤務先がペーパーレス化に踏み切れず、押印作業の負担に苦しんでいる人は確かに存在する。日立キャピタルら3社は、こうした層を何とかして助けたいと考えた。

 ハンコ文化から抜け出せない企業は、長期的にはペーパーレス化を視野に入れつつ、実現までの“中継ぎ”としてこのサービスを利用するのがよさそうだ。

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