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» 2019年12月17日 07時00分 公開

「何もかも変わった」――AIで若手棋士が超進化、いま囲碁界で何が起きているのか(3/4 ページ)

[村上万純ITmedia]

AIを使うのがうまい棋士は何が違う?

 大橋さんが「若手の中でも特にAIを使いこなすのがうまい」と太鼓判を押す上野さんは、AIをどのように使っているのか。

 「私は結構AIを信頼しちゃってます」と上野さんは笑うが、決してAIを盲信しているわけではない。AIが提案する手に疑問を持ったときは、AIの探索回数を増やして他の候補手を探したり、直感で思い浮かべた手と比較したりする。大橋さんによると、上野さんは「人間ならこういう手は打たないだろう」という判断力に長けているという。

 「AIの手を見ていると、人間ではありえないような進行になることがあります。普通はAIが打つ手が気になってしまうものですが、上野さんは対戦相手を想定して『人間ならこの手は打たないから、違う手を考えよう』と冷静に判断できる。僕は面白い手があるとつい深掘りしてしまうので、そういう考え方はすごく参考になります」(大橋さん)

大橋さん

 大橋さんは「上野さんに『こういう手が好きなんだね』と聞くと、『他に候補手がなかったんです』と返ってきたのも面白かった」とも話す。ベテラン棋士の中には、「AIで研究しすぎると、自由な手が打てなくなる。だから、自分の意思で打ちたい手を打つ」と考える人も多いという。実際、世界有数のトップ棋士を抱える中国や韓国ではAI研究が進んでおり、AIが示す手との一致率を重視するようなケースもあるそうだ。

 「自分の意思で手を選ぶベテラン棋士と、AIの研究を極めて消去法で考える若手棋士。真逆のアプローチで囲碁に向き合っているのが面白いですよね」と大橋さんは笑う。

 とある現場で同じ局面を見たときに、あるベテラン棋士は「こんな下品な手は打てない」と言い、別の若手棋士は「この手には感動した」と言ったそうだ。AIが指す常識外れの一手をどう受け取るか、プロの中でも判断が分かれている状態だ。大橋さんは「若手を見ていると、囲碁というゲームはまだまだ面白くなるんじゃないかと思うんです」と期待を寄せる。

AIを駆使する若手、迎え撃つベテラン棋士

 今後、棋士とAIの関係はどうなっていくのか。

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