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» 2019年12月17日 07時00分 公開

「何もかも変わった」――AIで若手棋士が超進化、いま囲碁界で何が起きているのか(2/4 ページ)

[村上万純,ITmedia]
上野さん

 これらのソフトをPCにインストールすると、AIを使った打ち筋の研究や対局ができる。上野さんの場合は、ELFを使って布石(序盤の打ち筋)の研究などをすることが多いという。上野さんはAIを使い始めてまだ1年半ほどだが、「勉強方法を含め、何もかもが変わりました」と笑う。

 特に序盤の打ち筋は、AIが登場したことで大きく変わった。これまで常識とされていた手も、実はあまり勝率が高くない――といったことが数値化されてしまったからだ。もちろん、AIの判断をどこまで信じるかという問題もあるが、実際、棋士たちが集まって議論する研究会の在り方も変化してきたという。

 例えば、これまでの研究会は、共通のテーマについて各自が研究した内容を持ち寄って議論する形式で、判断に困ったときは多数決を採ることも多かった。しかし、今はAIが答えを出してしまうため、研究会では対局だけを行って、帰宅後にAIで気になった所を各自でチェックする――というケースも増えた。

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 AIの登場で、若手棋士の意見もフラットにすくい上げられるようになった。これまでは判断力に長けた若手棋士が「誰も気付いていない好手」を見つけても、多数決でその手は否定されていたという。AIに答えを聞くことで、肩身の狭い思いをしていた若手棋士にも光が当たりやすくなったようだ。

 戦術のトレンドも目まぐるしく変わる。「昔は1つの戦法で1年くらい勝てる時期もありましたが、今は1局勝てるかどうかくらい。ネット対局で新戦法を試すとすぐに対策を立てられてしまいます」(大橋さん)

 とはいえ、AIを使えば誰もが強くなれるわけではない。AIは勝率の高い候補手を教えてくれるが、実戦で対戦相手がどのような手を打ってくるかは分からないし、AIには苦手なシチュエーションも存在するからだ。実際、AIの判断を信用できなくなってAIから離れていく棋士もいるという。

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