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コラム
» 2019年12月18日 07時00分 公開

災害発生時の「現金最強説」は本当か キャッシュレス決済の現実 (2/3)

[鈴木淳也(Junya Suzuki),ITmedia]

現金最強説は本当か

 すると、「やはり現金(キャッシュ)がいざというときには一番頼りになるのでは?」という話が出てくるわけだが、これはある意味で正しい。キャッシュレス先進国といわれる北欧でさえ、現金はなくなっているかと思いきや、街中の商店では必ずといっていいほど見かける。近年急速にキャッシュレス決済環境が普及しつつある中国においても、出番が減っただけで相変わらず現金は有効だ。

キャッシュレス比率が高いスウェーデンのストックホルムにおいても現金はいまだ主役。露店でも、支払いの3分の1程度は現金だという

 おそらく、日本でキャッシュレス決済が相当のレベルまで普及したとしても、現金が決済手段としてマイナーになることは当面ないだろうと筆者は予測している。

 別にサイゼリヤやラーメン屋で食事するためというわけではないが、キャッシュレス派の筆者も必ず数千円程度の現金は持ち歩いている。これにクレジットカード数枚と電子マネー(主にモバイルSuica)、コード決済数種類を組み合わせるのが現状の支払い手段だ。

 釣り銭のやりとりをしなくていいのと、後で明細を把握できるのがキャッシュレス派である理由だが、別に現金そのものを拒否する気はない。あくまで便利さを追求するからキャッシュレス利用に偏っているだけで、場合によって決済手段を使い分けるのが妥当だろう。

 「キャッシュレスというのは都市部に住んでいる人の話」という指摘もある。しかし、地方都市などでもイオンや地元のスーパーが「WAON」や「楽天Edy」に対応していれば、普段使いの決済手段は電子マネーになることが多く、実際には「釣り銭の勘定や受け渡しが面倒なので、お札をカウンターで渡してICカードにチャージしてから支払う」といった高齢者や主婦の方が多いと聞く。「それってキャッシュレスの意味ある?」と感想が出てきそうな話だが、「小銭を扱いたくない」という理由で電子マネーを使うのは利便性の面で理にかなっており、ある意味で正しい使い方なのだと思う。

 問題は現金にこだわるあまり、そのデメリットを失念することだ。

分散しないことによるリスク

 現金は確かに万能の支払い手段であり、特に日本においてはオンライン通販でさえ現金で支払う手段がある。しかし現金を手元に置きすぎるのは危険だ。例えば空き巣や強盗が家に入れば全て奪われる可能性があるし、多額の現金を持ち歩けば紛失リスクや強盗に襲われる可能性はやはり無視できない。

 このような形で失った現金は、運が良ければ戻ってくるかもしれないが、たいていの場合は諦めざるを得ないだろう。災害のケースでも同様で、家が浸水や火災などの被害を受ければ、金庫や“タンス預金”に保管しておいた現金は失われる危険性が高い。

 キャッシュレス決済の分散化と同じで、現金もなるべく分散管理し、至急必要ではない分については銀行に預けるのが正しい。昨今、長く続く低金利時代により銀行の収益源が限られ、口座維持手数料を請求するという話が持ち上がり話題になっているが、銀行が提供するサービスや安全性を考えれば、それだけの価値はあると筆者は考えている。何事も偏り過ぎはよくないというわけだ。

海外は大災害にどう対処? ハリケーン「サンディ」の事例で分かったこと

 「キャッシュレスと災害」というと、海外の事情も気になるところだ。そう考えて筆者は過去に、世界中のニュースアーカイブをたどり「キャッシュレス先進国ではどう対処していたのか」について調べていたのだが、思ったほど記録に残っていなくて驚いたことがあった。

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